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中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.10】
「塾はサービス業。気をつけたい教室内部のポイント」

著者の紹介

森 智勝

(もり・ともかつ)

塾生獲得実践会 全国学習塾援護会 主宰 

17年間の塾経営を経て、塾専門のマーケティング勉強会(塾生獲得実践会)を設立。机上の空論ではなく、現場主義を貫くマーケティング手法を全国の塾に提供している。経営コンサルタント、スタッフ研修等を専門に行っているが、特に不調塾の立て直しには定評がある。

教室の環境は大事。ないがしろにせず匂いや掃除に気を配る。

 いよいよ生徒と保護者が入塾面談に来ます。全てがファースト・コンタクトです。ココで言う「全て」とは、塾長(教室長)だけではありません。教室全体から受けるイメージも含まれます。まず、そのことについてお話します。

ホームページに使われている画像は、もしかしたら有料ポジかもしれません。そうでなくても、開校時(改装時)のきれいな写真を使用しているはずです。そのイメージのまま、保護者と生徒は教室にやってきます。

 まず気を付けたいのが「匂い」です。匂いは電話や画像では伝わりません。来塾して初めて気付くことです。私も多くの塾を訪問していますが、入室してすぐに感じるのは匂いです。中にはトイレの匂いや排水溝の匂いがする教室があります。自分の体臭には気付かないように、毎日、きっと自宅よりも長時間を過ごす自塾の匂いには鈍感になっている可能性があります。ぜひ、気を付けてください。

 次に気を付けるべきは整理整頓です。特に春期は、多くの教材が教室に送られてきます。中には、段ボールがそのまま教室の隅に、机の上に積まれたままのところがあります。あたかも倉庫の中で授業が展開されているかのような情景です。また、置き忘れたワークが机の上に放置されていたり、消しゴムのカスがそのままだったり…掃除がされていないのです。中には「掃除はしていますよ。毎週土曜日に」と、胸を張る塾長がいます。しかし、よく考えてください。

 塾はサービス業に区分される業種です。教室はそのサービスを提供する店舗です。例えば飲食店、例えば理髪店、例えばテーマパークで、毎日掃除をしないところがあるでしょうか。よく、「ちょっと汚いくらいのラーメン屋の方が美味しい」という声を聞きますが、少なくとも私は御免です。脂ぎった床、前の客が溢したスープがそのままのテーブル…そうした店が繁盛するとは思えません。同様に、生徒が使う教室は常に清潔に保つべきです。我が子をゴミとホコリにまみれた教室で勉強させたいと思う親はいないでしょう。

 そうした教室の塾長(教室長)は、「いや、掃除よりも大切なことがある」と言いますが、それは間違いです。掃除よりも大切なこととして授業準備等を挙げるのですが、授業準備と掃除を同じカテゴリーとして優劣を付けてはいけません。それらは別のカテゴリーであり、あえて言えば「どちらも大切」なのです。

 授業終了後、ほんの数分です。机の上の消しクズを始末し、もし落書き等を見つけたら消しておきます。授業開始前には掃除機をかけ、ゴミやほこりを除いておきます。週に一度は机や窓を水拭きして、桟の汚れも取り除きます。教材やコピー用紙を梱包した段ボールは、その都度畳んでバックヤードに片付けます-こうした日常の整理整頓・掃除を通して、常に清潔な教室にしておくことです。排水溝やトイレも定期的に保全処置をして、不快な匂いを防いでください。

居心地の良い教室を作るための演出を

 次に注意をしたいのが、教室全体の演出です。掲示板に、既に終了した「冬期講習の案内」が貼ってありませんか? 長年掲示したままの年表や世界地図の端が破れて、捲(めく)れあがっていませんか? 床に敷いたタイルカーペットに、溢(こぼ)したコーヒーのシミがそのままになっていませんか? 繰り返しますが、常にその場にいる「あなた」は気付かないことが多いものです。しかし、初めて教室を訪れた生徒&保護者は、そうした小さな1つ1つのことから塾全体をイメージします。

 これは今回のテーマとは外れますが、ホームページにも同じことが言えます。すでに終了した講習の案内がそのままだったり、塾長のコラムが1年前で止まっていたりするのを見掛けます。いくら素晴らしい指導をしていたとしても、それ以前に「手抜き」「ズボラ」というイメージを持たれてしまうのは致命傷です。

 どんな美味しいカレーを売っていたとしても、その美味しさは食べてもらわなければ伝わりません。その、食べてもらうまでの工夫、仕組み作りがマーケティングなのですが、中小・個人塾の中には、そこにあまりにも無頓着なところが多いのです。整理整頓された清潔な教室は、美味しいカレー(授業)を食べてもらうための必要条件です。

 ホテルの部屋には決まって、絵が飾られています。旅館には花が活けられ、書画が掲げられています。たいていの場合、それらを意識して眺める客はいません。しかし、「何となく居心地のいい旅館だったね」という評判を造るのに欠かせない要素になっています。私は脳科学者ではありませんので、この「何となく」が右脳の働きなのか何なのかを論じる術は持ち合わせていませんが、この「何となく」がビジネスにおいて重要な要素だということは断言できます。

 塾も同じです。何となく居心地の良い教室を作ることが、「お客様を店に招き入れるサービス業」として不可欠なのです。

 なお、誤解の無いように付言しますが、古いと汚いは別です。もちろん、新しいと清潔も別です。校舎(教室)自体は古くても、清潔な環境を提供することはできます。古い寺院を訪問して、清々しい空気感を持つことは珍しくありません。

 

 さあ、そうした教室を作って保護者&生徒の来塾に備えましょう。具体的な面談手法については次回以降にお話します。