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中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.13】
友人紹介の方法[1]

著者の紹介

森 智勝

(もり・ともかつ)

学習塾経営アドバイザー

17年間の塾経営を経て、塾専門のマーケティング勉強会(塾生獲得実践会)を設立。机上の空論ではなく、現場主義を貫くマーケティング手法を全国の塾に提供している。経営コンサルタント、スタッフ研修等を専門に行っているが、特に不調塾の立て直しには定評がある。

友人紹介の方法[1]

これまで塾生獲得のマーケティングについて説明をしてきました。いよいよ最終版、「紹介」による塾生獲得についてお話します。

ほとんどのほとんどの塾経営者が友人紹介による塾生獲得を理想としています。その通りでしょう。塾生紹介には経費が掛かりませんし、退塾率が低いというデータもあります。ところが、紹介が欲しいにも関わらず、紹介状や紹介の依頼文を常備していない塾が多いものです。

以前にお話しましたが、人は「形」に反応する性質を持っています。塾からの「友人紹介の依頼文」を見て初めて、身近にいる「塾を探している人」が見つかります。こうした状態を「アンテナが立つ」と表現します。

あなたにも経験があるはずです。「車をエスティマに買い替えようか」と思った瞬間から、街を走るエスティマが目に入り始めます。母親も「子どもを塾に通わせよう」と思うようになって、塾の看板が気になり始めます。もう10年以上そこで塾を開いているのに、来塾した保護者に「ここに塾があることを知りませんでした」と言われることは珍しくありません。人は、自分が興味のない事象に対しては「見えていても気付かない」=「アンテナが立っていない」のです。

同様に、ママ友が塾を探していたとしても、普段の付き合いの中でスルーしてしまうことが常なのです。だって、ママ友の子どもの成績に興味などないのですから。友人紹介の依頼文と紹介状の存在は、そうした保護者のアンテナを立たせるために必須のアイテムです。塾が友人紹介を欲していることを伝えなければ、それを保護者に理解してもらうことなど不可能です。思いは伝えなければ伝われません。

そこで重要なことは2点です。

1つは、生徒に対して「商品紹介」を依頼してはいけないということです。ここで言う商品とは、対価を必要とするものです。以前、某大手塾が週刊誌に叩かれたことがあります。曰く「塾生をセールスマンにして新規顧客を獲得する塾」という批判です。その某大手塾には塾生紹介依頼のマニュアルが存在し、授業中に生徒に対して友人紹介のアピールをしているとか。そして友人紹介をした塾生に対して数千円~数百円の図書券(金券)をお礼として渡している…まあ、悪意と穿った見方で書かれた記事でした。が、ひとつだけビジネスの本質として学ぶべきことがあります。「顧客の紹介は顧客に依頼しなければならない」ということです。

塾にとって生徒は、サービスの提供者ではあっても顧客ではありません。顧客とは「対価を払う者」であり、塾にとってそれは「保護者」です。塾は顧客である保護者から対価を頂いて、その要請によって子どもに学習指導を提供するビジネスです。そこが歯科医院やエステ、スポーツジム等と違うところです。

顧客ではない塾生を利用して顧客を獲得しようとするから批判を受け、非難されることになるのです。友人(顧客)紹介は、それが正規生でも講習生でも、あくまでも顧客である保護者に依頼しなければなりません。

「では塾生には友人紹介をしてはいけないのか」と問われれば、「否」です。対価が発生しないものに関しては積極的に友人紹介を依頼すべきです。例えばスポーツイベント、例えば無料のテスト対策、社会見学会…そうした対価を必要としない(利益を目的としない)行事に関しては堂々と行えばいいのです。そして、対価の発生する顧客紹介は、顧客である保護者に対して堂々と依頼することです。

ここで2つ目の留意点です。紹介依頼をする場合、多くの塾が自塾目線、自塾の都合だけに終始してしまいます。私が「友人を紹介した場合の(生徒&保護者側の)メリットは何ですか?」と尋ねると、「う~~~ん…図書券3,000円分が貰えます」と答える塾長が多いものです。この「お礼」に関しては次回、詳しく論じますが、これでは「3,000円で友人を売るイメージ」=後ろめたさが付いて回ります。そうではなく、友人紹介をすることが「友人にとっても、あなたの子どもにとっても良いことだ」という説明が必要なのです。

説明の内容は塾(塾長)のキャラクターによって様々考えられますが、1つだけ見本を紹介します。これを参考にして自塾のキャラに合った紹介依頼文を作ってください。(実際は縦書きをお勧めします)

ライバルを身近に置け!(友人紹介キャンペーンを前に)

想像してみてください。誰かに「限界までグランドを一人で走れ!」と命令された時のことを。もしかしたら十周程度で限界が来て、走るのを止めてしまうかも知れません。

「あなた」は野球部の一員です。そして、同じように「全員で限界まで走れ!」と監督から命令されたとします。この時、「あなたの限界」は確実に十周を超えます。なぜなら、「みんなが頑張っているのに、自分だけ脱落するわけにはいかない」という思いが生じるからです。もしかしたら、「あいつより先にくたばるものか!」という思いを持つ人もいるでしょう。特に、野球部のように同じ目標を持った仲間と一緒の時、その効果はより大きくなります。

ライバルの存在が自分を成長させる…よく聞かれるフレーズですが、その理由は上記のような心理の中にあります。(ベタな?シチュエーションですが)青春ドラマの中の受験生が、向かいの家に住むライバルの部屋の明かりが消えるまで勉強を続ける…そんな場面を見た人もいることでしょう。

ライバルの存在が自分を成長させる…これは真実です。

ですから「あなた」も、ライバルを身近に置くことです。ライバルと競い合い、切磋琢磨することは互いの成長を促す最大の方法です。

〇〇塾では積極的に「友人紹介」を求めています。なぜなら、塾の中に良きライバルが存在することが、「あなた」にとっても「彼」にとっても望ましいことだからです。そして塾としても、「あなた」と同じように向上心に溢れた塾生が増えることを心から願っています。また、チラシや看板を見て来塾してくれるのは嬉しいことですが、「あなた」から塾の理念・方針を聞き、ある程度理解した上で来塾してくれる生徒の方が、学習効果が高いことを経験上、私は知っています。

どうぞ、あなたのライバルに〇〇塾を紹介してください。あなたの良き友人の期待を裏切るようなことは絶対にありません。

この夏に実施する「夏期講習トライアル」の「紹介状」を同封します。それを彼(彼女)に渡すことが、あなたと彼(彼女)のライバル物語の始まりです。

追伸 保護者各位

お陰様で〇〇塾は、向上心に溢れた多くの生徒に通っていただいています。塾生一人ひとりが教室内の環境を向上させる構成員となり、相乗効果を生み出しています。この優れた雰囲気を壊さないような教室運営に努めてまいります。そのためにも、空席分は出来る限り「塾生の紹介者」で埋めたいと考えています。趣旨をご理解の上、今回の「友人紹介キャンペーン」にご協力下さい。なお、お友達をご紹介いただいた方には、ささやかながら御礼の品を進呈いたします。

〇〇塾 塾長 〇〇 〇〇〇

さて、あなたが考える「友人を自塾に紹介する理由」は何ですか?(次回へ続く)