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中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.6】
「行動すると意欲が増幅する」

著者の紹介

森 智勝

(もり・ともかつ)

塾生獲得実践会 全国学習塾援護会 主宰 

17年間の塾経営を経て、塾専門のマーケティング勉強会(塾生獲得実践会)を設立。机上の空論ではなく、現場主義を貫くマーケティング手法を全国の塾に提供している。経営コンサルタント、スタッフ研修等を専門に行っているが、特に不調塾の立て直しには定評がある。

新規塾生獲得は戦略が必要

人(消費者)が購買行動をするにはいくつもの法則があります。前回お話した「感動の法則」もその一つです。

単価の低い商品ならば、衝動買いを誘うマーケティング手法があります。こんなTV通販を見たことがありませんか?

「こんな素敵な時計が1万円ですか? ではペアで揃えても2万円で済みますね」
「いえ、今ならペアで1万円です」
「まあ!」
「そして何と今回、この革製ベルトのペア時計を加えてもジャスト1万円の大キャンペーンです」
「ひぇ~!!!」

一般の主婦が衝動買いをする価格帯があります。データによると3,000円以下です。そのために通販商品は単価を3,000円以下にする工夫をしています。上記の時計も単価は2,500円です。健康食品や美容食品も、「初回に限り半額の〇〇円です」と、単価を3,000円以下にすることが通例です。いわゆる「まっ、騙されても惜しくない程度の価格」を設定するわけです。

ところが高額商品、例えば家や車はそうはいきません。そこで、別の法則を駆使します。人は、「行動することで意欲を増幅させる」という行動法則を持っています。

小さな成功体験が次に向かうモチベーションになる

慰安旅行で泊まった宿に卓球台があったとします。「課長、卓球しましょう」と部下に誘われ、気乗りはしなかったが付き合うことにします。そのうち汗をかき調子が乗ってくると、「よし、紙とペンを持って来い。トーナメント大会を開催するぞ。優勝者には俺がビールを振舞ってやる」と、自ら率先して動くことになったりして…。

よく、「その気にならないのに学習を強いても無駄だ」という人(保護者)がいます。それはある意味正しいのですが、では、自然と学習意欲が生まれるかと言えば、それは難しい。最初はある程度の強制力が必要で、その結果、小さな成功体験を持たせることです。その経験が自己肯定力になり、次に向かうモチベーションになります。「君はやればできる」ではなく、やって成果が出た時に「なっ、やればできただろう」と言ってあげることです。これを応用していきましょう。

塾によって授業料は違いますが、平均すると月に2万円、年間30万円程度になります。3年間通えばすぐに100万円という、家庭にとっては安くない買い物です。それをチラシ1枚で衝動買いさせようとするのは無理があります。そこには行動の法則を熟知した戦略が必要です。

何事も、最初の一歩に最もエネルギーを必要とするものです。最初の一歩を踏み出した人は、次の一歩に大きなエネルギーを必要としません。ハウジングセンターが「ゴレンジャーショ-」を開催するのも、新聞販売店が新規契約に洗剤や、時としてプロ野球の観戦チケットを付けるのも、その「第一歩」を促すためです。スーパーがチラシの冒頭に「卵1個、1円」と特売を表示するのも同じです。大きなファーストインプレッションを消費者に与えて、第一歩を踏み出してもらうことが狙いです。

詳しいことは今後の解説の中でお話しますが、少なくとも相手(生徒&保護者)に第一歩を踏み出してもらい、入塾までの階段を登ってもらう戦略が必要です。

新規塾生獲得までのステージ

新規塾生を獲得するまでの階段は、チラシ⇒ホームページ⇒電話問合せ⇒面談⇒体験授業⇒正式入塾となるのが一般的です。それぞれのステージに、「次のステージに踏み出してもらうための仕掛け(工夫)」をすることです。少なくとも、チラシから一気に入塾を求めるのは無謀です。(もう一つの獲得ルートである「紹介」については別項で解説します)

それぞれのステージの役割は次のようになります。

  1. チラシ …塾に興味を持ってもらう
  2. ホームページ …塾を疑似体験してもらう
  3. 電話問合せ …そこはかとない塾の信頼感を持ってもらう
  4. 面談 …確かな信頼感を(特に保護者に)持ってもらう
  5. 体験授業 …指導のクオリティを(特に生徒に)感じてもらう

こうした役割を意識して、それぞれのステージを構築していきます。

いよいよ次回から、具体的な手法についてお話を進めます。ただ、これだけは忘れないでください。ビジネスにとって商品力が全体の8割の重要度を占めています。クオリティの高い商品(授業・講師・カリキュラム等)の存在を前提にマーケティングは威力を発揮します。

最初のテーマは「チラシ」です。「最近は新聞をとっていない家庭が増えた」とか、「チラシの反応率が悪くなった」とかの理由で、チラシを「あいさつ程度」にしか投入しない塾が増えているようです。もちろん、その現象を否定はしませんが、それを理由にチラシ(新聞だけでなくポスティングやタウン誌)を軽視するのはお勧めしません。一般市場に「認知」を深めるツールとして、チラシはまだまだ有効です。また、チラシの内容を吟味することは、塾全体の吟味をする良い機会です。「まずは隗より始めよ」の言葉があるように、チラシの見直しから塾の見直しを始めることをお勧めします。