広告はフックにすぎない
今回のテーマは「内部充実に徹する」。私がコンサルティングをする際に、そして自塾を経営する上においても、最も大切にしていることです。
弊塾は大手塾ポータルサイトを利用していませんので、保護者さんからのお問い合わせルートは原則として「チラシ」「HP」「看板」、あるいは「紹介」「評判」のいずれかです。このうち広告媒体は「チラシ」「HP」「看板」の三つですが、これらは基本的にフックにしか過ぎないと思っています。
もちろん、それらがどうでもいいと言うのではありません。チラシ1枚作るのにも、それこそ必死で構成や見せ方も工夫に工夫を重ねています。それはみなさんと一緒です。ただ気を付けているのは、「それだけで問い合わせが増えるものではない」ということです。問い合わせの数は、あくまで塾そのものの質(=内部充実度)に比例していると思います。つまり、掛け算の考え方ですね。極端に言えば、いくら最新のマーケティング技術を駆使した良いチラシを作っても、土台となる塾の質がゼロなら、いくら掛け算しても反響はゼロのままだという考えです。
保護者さんが塾を探す際の、個人のつながりを駆使した情報網って、本当にすごいですよ。私たちの予想のはるか上をいっていると想定しておくくらいでちょうどいいです。
「あの塾は、雰囲気がとても良い(悪い)」
「あの塾は、社員がとても良い(悪い)」
「あの塾は、対応がとても良い(悪い)」
などなど、ありとあらゆる情報が交換されています。そして、良いも悪いもウワサや口コミの類は、尾ひれがついて回ります。とにかく、軽く見てはいけないのです。
反響量の数がチラシの中身だけに依存しているなら、理論的には同じチラシを作れば同じような数の反響があるはずなのです。セミナーや勉強会でチラシの作り方を学んで実践しても、塾さんによって結果が異なるのは、(時期や地域性などを除けば)やはりベースとなる塾の中身が影響している可能性大です。
広告より先に、見直すべき「基礎構造の欠陥」はありませんか?
私もコンサル業務の一環として、多くの塾さんのチラシづくりをお手伝いさせていただいておりますが、この本質的要素は非常に強く意識します。そのため、チラシの制作前に必ず教室を訪問し、塾長さんとお話ししたり、教室の雰囲気を感じたりなど、「塾の基礎構造」の部分をしっかり見させていただくようにしていいます。
以前は、依頼を受けたほとんどの塾さんのチラシ制作をお手伝いしていましたが、最近では、この訪問時に「うーん、微妙な塾さんだなぁ……」と感じる場合は、お断りすることも増えてきました。「チラシ以前の問題」であることもあるからです。
ただ、そもそも私は困っている塾経営者さんを助けたくてコンサル業をしているわけです。その面から言えば、お断りするのはどうかと悩むのですが、仮にチラシだけ良いものを整えて、ある意味で「騙す」かのように生徒さんを入塾へ導いても、彼らを不幸にしてしまう可能性が高いです。もちろん、その「チラシ以前の問題」から一緒に解決していきましょう!となる場合もありますし、生徒さんのためになる環境を作ることで、結果として塾の経営状態も良くなる――この順番を間違えたくないと思います。
ですからやはり、良いチラシを作って、良い成果(=生徒さんがたくさん集まる)を出すためにも、まずは内部充実だと思うのです。もしいまあなたの塾で、生徒数が増えずに悩んでいるとか、チラシの反応が全くなくて困っておられるということであれば、まず一度、チラシよりも塾の中身を見つめ直してみることも大切にしてください。何か根本的な原因や改善すべき点が見つかるかもしれませんよ。
そもそも「内部充実」って何だ?
そこで、どう内部充実すればいいの?という話になると思いますが、ひとことで「内部充実」と言っても、定義があるものではありません。個人によって、解釈の差もあるでしょう。「内部充実」という、あいまいで広範囲で抽象的な表現が良くないのかもしれませんね。
ただ、基本的・根本的な思想さえ分かっていれば、具体的な取り組み方は多様であっていいと思います。私の考える「内部充実」の基本思想は、例えばこんな感じです。
・生徒さんや保護者さんとの丁寧なコミュニケーションを図る
・生徒さんをやる気を引き出し、成績が上がる
・人間力のある講師を採用・研修し、授業を行う
・笑顔で生徒さんを迎え入れ、笑顔にする
・勉強しやすい静かな空間を作る
・退会を出さない(=退会しようという気持ちを微塵も抱かないくらい、良い塾にする)
・生徒さん一人ひとりのことを考え、最適なプランを立てる
・できない事はしない、言わない
・約束はきちんと守る
・命をかけて塾運営を行う
特に変わったことはしていませんが、弊塾ではこうしたことを意識して塾づくりをしています。先述したように、これをどうやって具体化するかはそれぞれの方法で良いと思うのです。心から生徒さんのためになることは何かを考えて、当たり前のことを当たり前にしていたら、自然と内部充実につながっていくはずですよ。こうした本質的な部分をやらずに、目新しさや小手先にばかり頼るのが、良くないのだと思います。
「奪い合う」ことから「与え合う」発想へ
よく、広告論やマーケティングセミナーなどで語られる「生徒を集めます」「生徒を入会させます」という表現は、個人的にはあまり好きではありません。単なる言葉のあやだというのは分かっているのですが、「○○させる」という言い方は、テクニックで誘導して相手に自分の意に沿う行動を取らせようとしている感じがして、どうにもモヤモヤするのです。
あなたがお客の立場だったら、同じことを感じませんか?何かを買ったときに、お店側が裏で「あの客に買わせてやった(買うように誘導した)」なんて言っていたら、腹が立ちますよね。やはり「○○させる」という言い方は、顧客に対し失礼な考え方であると思います。生徒さんや保護者さんは「入塾したい」のであって、「入塾させられたい」のではないんです。
「じゃあお前はどうなんだ」と言われたら、確かに弊塾も完璧ではありません。できていない部分ももちろんあり、ついヨコシマな発想で考えている自分に気付いて「ハッ」とすることもあります。そこは反省と改善を繰り返しながら、少しでも胸を張って塾経営できるように修行の日々ですね。だからこそ、ここをお読みくださっているあなたと一緒に成長しながら、良い塾づくりをしていきたいと思っています。
究極を言ってしまえば、塾経営の方針や理念は人それぞれ。私の考えを押し付けることなどできません。それでも声を大にして断言したいのは、「内部充実ありきで生徒数は増える」ということです。
顧客は決してバカではありません。売り手側が思う以上に、はるかにかしこいのです。そうすると、顧客の想像の上をいくテクニックやノウハウを必死で考え出そうとする人がいるのですが、それは騙し合いのイタチごっこ。売り手と買い手が利益を奪い合う構図です。そうではなく、やはり「与えあう」関係を作りたいですよね。いかに相手から「奪う」かに知恵を巡らせる時間と労力があれば、いかに「与えられるか(=顧客を喜ばせられるか)」を考えたほうがいいですし、すなわちそれこそが「内部充実」なのです。
正々堂々勝負して、正々堂々生徒数が増える。内部充実はまず基本の心構えから!いや、この心構えさえできれば、自然と内部充実できるのです。ここを忘れずに、一緒に、地域に評価され貢献できる塾を目指していきましょう!