中3→高1の継続率、いかがですか?
みなさんご存知のように、中学・高校受験専門(高等部を持たない)塾さんでもないかぎり、生徒さんが中3から高1へ上がる際の継続率は、塾運営の生命線の一つですよね。みなさんの教室での継続率はいかがですか?
弊社では、セミナーなどを介してさまざまな形で情報提供をしていますが、中でも確信に近い自信を持ってお伝えできるのが、この「中3→高1の継続法」についてです。
少し大げさかもしれませんが、名付けて「中3継続率80%法」!
弊塾では平均して80%の中3塾生が、高校に入学後も通塾を継続してくれています。自塾で実際に結果を出している実証済みのやり方ですので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
ポイントは「○○を○○すること」。
とは言うものの、やっている内容そのものはいたって普通です。ボタンを押せば自動的に生徒さんが継続通塾してくれるとか、夢のようなシステムを期待されていた方には申し訳ありませんが、あえて「秘訣」といった表現をするのであれば、それしかないんです。
「○○を○○する」というのは、つまり「普通のことを普通に実行する」こと。しかし逆に言えば、中3継続率があまり良くない塾さんは、この普通のことが普通にできていない可能性が高いです。さらに別の言い方をすれば、普通のことを普通にやれさえすれば、結果はちゃんとついてくるということでもあります。
ぜひ、原点に立ち返るような気持ちで読んでいただければ嬉しいです。
広告より先に、見直すべき「基礎構造の欠陥」はありませんか?
私もコンサル業務の一環として、多くの塾さんのチラシづくりをお手伝いさせていただいておりますが、この本質的要素は非常に強く意識します。そのため、チラシの制作前に必ず教室を訪問し、塾長さんとお話ししたり、教室の雰囲気を感じたりなど、「塾の基礎構造」の部分をしっかり見させていただくようにしていいます。
以前は、依頼を受けたほとんどの塾さんのチラシ制作をお手伝いしていましたが、最近では、この訪問時に「うーん、微妙な塾さんだなぁ……」と感じる場合は、お断りすることも増えてきました。「チラシ以前の問題」であることもあるからです。
ただ、そもそも私は困っている塾経営者さんを助けたくてコンサル業をしているわけです。その面から言えば、お断りするのはどうかと悩むのですが、仮にチラシだけ良いものを整えて、ある意味で「騙す」かのように生徒さんを入塾へ導いても、彼らを不幸にしてしまう可能性が高いです。もちろん、その「チラシ以前の問題」から一緒に解決していきましょう!となる場合もありますし、生徒さんのためになる環境を作ることで、結果として塾の経営状態も良くなる――この順番を間違えたくないと思います。
ですからやはり、良いチラシを作って、良い成果(=生徒さんがたくさん集まる)を出すためにも、まずは内部充実だと思うのです。もしいまあなたの塾で、生徒数が増えずに悩んでいるとか、チラシの反応が全くなくて困っておられるということであれば、まず一度、チラシよりも塾の中身を見つめ直してみることも大切にしてください。何か根本的な原因や改善すべき点が見つかるかもしれませんよ。
継続率80%を実現する、5つの取り組み
弊塾で「普通に」取り組んでいる中3継続率80%法のポイントは、以下の5つです。
- 高継続するのは当然だという意識改革
- 楽しい教室環境作り
- 合格後に、教室に来る仕組み作り
- 高校生の姿を見せる
- 大学入試に詳しくなる
【1.継続するのは当然だという意識改革】
生徒さんにハッパをかけたいあまり、つい「高校入試まで頑張れ!」といったニュアンスの声掛けをしていませんでしょうか?気持ちはよく分かるのですが、これを繰り返していると生徒さんは自動的に高校受験をゴールに見据えてしまいます。しんどい勉強も、そこがゴールだと思って走りぬこうとします。
なのに、ゴール後に「さあ、高校からも(通塾して)がんばろう!」と言われたところで再びテンションを上げていくのは大人でも大変です。マラソンに例えるなら、42㎞走り切ったあとに、もう42㎞走りなさいと言われるようなものです。ですから、はじめからゴールはその先に設定しておくことが大事だと思います。
高校入試が終わっても、3年後には大学入試が待っています。もっと言えば、その先の社会人生活を含めて、そもそもゴールなどないのかもしれません。絶対に大学へ進学する必要はありませんが、中3の時点で「絶対に大学へは行かない」と断定してしまうのも、もったいない話です。
ですから私は、中3生に対して、「大学には進学するもの」という前提で常日頃から「3年後の大学入試を考えたら、高校入試なんて通過点にすぎない。軽く乗り越えなさい」と伝えるようにしています。
それが当然という塾内の空気感を作ると言いましょうか、表現としては不適切かもしれませんが「刷り込んで」いくのです。そうすることで、中3生も意識が変わっていきます。
そのためには、生徒さんだけでなく私たち自身の意識を変えることも大切です。これまでの経験や慣習からつい無意識に「中3生は高校入試が終われば辞める」という考えが「常識」になっていませんでしょうか?逆に私たちが「刷り込まれている」とも言えます。
厳しい言い方になってしまいますが、塾長(経営者・教室長)がこの意識のままではいけません。中3の継続は当然のことであり、「継続しないのは異常事態」だと思えるほどでないと。
また、こうした意識改革は社員だけでなく、講師にも行ってもらう必要があります。私たちが必死で生徒たちの意識改革に取り組んでも、つい講師が「高校入試まで頑張ろう」と励まそうものなら、ダブルスタンダードになってしまいますし、すべてがぶち壊しです。
講師のみなさんにも、普段から中3継続の意図を理解してもらうよう伝えておきましょう。
【2.楽しい教室環境作り】
これは当然すぎて、「何を今さら」感もあると思いますが、中3継続にはやはり欠かせない要素です。「高校入試は通過点」と必死に伝え続け、それを生徒さんに理解してもらえたとしても、「分かりました。高校からも塾に行きます(でも他の塾へ)」なんて話になっては、笑うに笑えません。
そのためにも、普段から生徒さんにとって、居心地のよい楽しい教室環境作りを目指してください。
【3.合格後に、教室に来る仕組み作り】
合格発表後に、生徒さんは電話や教室を訪れるなどしてその吉報を届けてくれます。このとき私たちも「よく頑張ったね!おめでとう!」となるわけですが、この一言だけだと、生徒さんはもう塾には戻ってきてくれない可能性が高いです。「先生、今までありがとう!」と、晴ればれと塾をやめてしまうでしょう(笑)。
そこで「合格おめでとう!よく頑張ったね」の後に、こう付け加えてみてください。「高校から大量の課題が出るから、○月△日×時に教室集合ね!」。そうやって、次回教室に来てもらう日をその場で決めます。もう、さもそれが当然であるかのように、さらっと確定させることが大切なのです。これも意識付けの延長ですね。
実施内容は、いつもの個別指導ではなくても構いません。中3生全員集めた少人数制の指導でもいいと思います。とにかく、教室へ来るきっかけと理由をこちらから提示してあげるのです。どのみち、進学先の高校から出される大量の課題は、嫌でもやらないといけないわけです。入学早々課題テストだってあります。それなら、教室に来てもらわない理由などありませんよね。
大学入試でも、入試をゴールにしていると、合格後にテンションが上がらない「燃え尽き症候群」に陥る学生は少なくありません。高校入試も一緒です。もちろん、これまで頑張ってきた想いを爆発させ、春休み期間中にたくさん遊んでもいいと思います。しかしその一方で、勉強に対する意識や姿勢だけは切らさないようにしてあげたいところ。
合格発表から入学式まで、しっかりと勉強する習慣をつけ、高校に入ってからも授業についていけるようにサポートするのも我々の責務ではないでしょうか。
ちなみに私は生徒さんに、「高1の1学期中間試験の順位が、そのまま3年間の順位となるよ」と伝えています。スタートからつまずいてしまうと、追いつくのは非常に困難です。気持ちの上でも「自分は(勉強が)できない」という自己暗示をかけてしまいます。しかし、一般的に高校は同じぐらいの学力の子たちが集まるわけですから、いわばチャンスでもあります。中学生では平均点ぐらいだったとしても、頑張り次第で高校では成績上位に行くチャンスが転がっていることを伝えます。
また、弊塾では、春期講習無料・4月1ヶ月無料キャンペーンも行います。高校入学後にスムーズに授業に入っていけるよう、サポートするのが目的です。具体的には、春休み中に、数学は因数分解のたすき掛けまで、英語は第5文型までは終わらせるように進めていきます。
これはある意味で「仕掛け」とも言えますが、中3の1年間、決して安くない月謝をご負担いただいた保護者さんへの感謝も込めていますが、こと「継続率を上げる」という意味では、良い仕掛けにもなっていると感じます。
【4.高校生の姿を見せる】
中3受験生たちには、ぜひ高校生(の生徒さん)たちの姿を積極的に見せてあげてください。高校生が学校の勉強や大学受験に向けて取り組んでいる姿を見れば、中3生も感化され「そうか、これくらいやらなきゃいけないんだ」と思ってもらえるはずです。
また、高校生に直接語ってもらうことも効果的です。中3の時、どれぐらい取り組んだか、どんなに大変だったか、どう乗り越えてきたのか、なぜ今も通塾を続けているのか、良かったことも失敗談も含めて、赤裸々に話してもらいましょう。高1の1学期がどれだけ大変であるかや、入学前の春休みにしっかり勉強しておくことを伝えてくれればより効果的です。
もちろん、そうした話題に触れて欲しいと、事前に高校生にお願いしておくことも大切です。
中3受験生の志望校に、実際に通っている高校生の生徒さんがいれば、マンツーマンで話す時間を取ることも効果的です。受験生のモチベーションアップだけではなく、高校生の成長にもつながります。
【5.大学入試に詳しくなる】
2021年度入試から大きく制度が変わります。英検を使うとか使わないとか、記述式はやっぱりやめるとか、ポートフォリオはどうなるんだとか、二転三転を続けて迷走気味の新入試制度ですが、現状をきちんと把握できていますでしょうか?「学力の3要素」とは何か、生徒さんや保護者さんに説明できるでしょうか?これまで使われてきた「センター試験」「AO入試」という名称だって変更されていますが、こうした大学入試関連の情報のアップデートをしておかないと、信用してもらえません。
中3生の継続率をアップするということは、たくさんの高校生に通塾してもらうことです。高校生やその保護者に大学入試のアレコレを話せないようであれば、高校生が通う塾として安心してもらえませんよね。
大学入試に対するノウハウや知識がないのに、高校生を受け入れるのは、ある意味で詐欺です。生徒さんから「高校の進路指導の先生よりも信頼を得る」くらいの気持ちで、私たちも学び続けましょう。
そこで、どう内部充実すればいいの?という話になると思いますが、ひとことで「内部充実」と言っても、定義があるものではありません。個人によって、解釈の差もあるでしょう。「内部充実」という、あいまいで広範囲で抽象的な表現が良くないのかもしれませんね。
ただ、基本的・根本的な思想さえ分かっていれば、具体的な取り組み方は多様であっていいと思います。私の考える「内部充実」の基本思想は、例えばこんな感じです。
・生徒さんや保護者さんとの丁寧なコミュニケーションを図る
・生徒さんをやる気を引き出し、成績が上がる
・人間力のある講師を採用・研修し、授業を行う
・笑顔で生徒さんを迎え入れ、笑顔にする
・勉強しやすい静かな空間を作る
・退会を出さない(=退会しようという気持ちを微塵も抱かないくらい、良い塾にする)
・生徒さん一人ひとりのことを考え、最適なプランを立てる
・できない事はしない、言わない
・約束はきちんと守る
・命をかけて塾運営を行う
特に変わったことはしていませんが、弊塾ではこうしたことを意識して塾づくりをしています。先述したように、これをどうやって具体化するかはそれぞれの方法で良いと思うのです。心から生徒さんのためになることは何かを考えて、当たり前のことを当たり前にしていたら、自然と内部充実につながっていくはずですよ。こうした本質的な部分をやらずに、目新しさや小手先にばかり頼るのが、良くないのだと思います。
継続率80%を実現する、5つの取り組み
いかがですか?
こうした意識や取り組みのもとで中3生に対応していけば、おのずと継続率は上がっていきます。繰り返しになりますが、特に変わったことをしているわけではありません。「普通のことを、普通にやる!」、まずはそこからです。
実際に取り組んでみて感じるのは「継続率を上げるために」これらの行動をするのではなく、純粋に生徒さんのことを心底考えて行動するからこそ、結果として継続率がアップするということです。これって、とても大事ですよ。
高校進学を控えたころになって、急に(高校からも継続通塾すべき)もっともらしい理由だけ並べても、信用してもらえません。「そんなこと言って、ようは高校からも塾に通わせて儲けたいだけでしょ」なんて思われるような関係になってはいけませんよね。
ですから、普段からの接し方やコミュニケーションが大切なのです。これまでの生徒さん、保護者さんへの接し方やそもそもの意識が、中3継続率にあらわれるとも言えるのかもしれませんね。