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退会をなくせば、生徒は増える!

退会をなくせば、生徒は増える!

著者の紹介

安多 秀司 (やすた・ひでし)

株式会社リアル・パートナーズ、株式会社個別教育フォレスト

ゴールフリー、スタンダードカンパニーを経て独立。個別教育フォレストを開校。個別指導歴17年。自塾を運営する傍ら、全国各地で個別指導塾の経営コンサルティングやセミナー登壇などにも精力的に取り組んでいる。

 

 学習塾運営の基本に戻る内容で今回はお伝えしたいと思います。

集客以前に、塾の中身が大事

 やっぱり塾って、中身ありきだと思うんです。ナントカ集客術とか、ナントカマーケティングといった技術でも塾生を集めることはできますが、それは一過性のもの。その手法が陳腐化されれば、また新しいノウハウに頼るしかなく、いわば表面を取り繕い続けるだけの自転車操業です。やはり、「塾として質が高い」という、当たり前で中心となる太い幹があってこそ、枝葉となるビジネステクニックも活きてくるものだと思います。

 もちろん、新規立ち上げの時などは、まずは自塾の存在を知ってもらうためにチラシを折り込んだり、校門前配布をしたりといった広報活動は必要です。開校してからも、常に知ってもらうための宣伝をするのも大切です。

 ただ、繰り返しになりますが、広告ってバランスがとても大事で、中身がないのに宣伝に力を入れても、退塾がどんどん出るだけ。
「チラシではいい塾だと思ったけど、入ってみたらそうでもなかった」と、悪い評判がどんどん広まります。

 問題は、そういう悪評が定着してしまうと、広告さえも逆効果になってしまう場合があるということです。
広告すればするほど、「ああ、あの評判の悪い塾ね~」「生徒集めに必死ね」「相変わらず、チラシで良く見せるのだけは上手ね」と、ますます問い合わせがなくなります。もうこうなると、最悪のスパイラルです。

 私は、自塾を運営しながらコンサルティングもさせていただいているので、色々な塾さんから相談を受けますが、その半分以上が結局は「生徒が集まらない」「チラシの反応がない」といった内容です。

 全員がそうではありませんが、こういった方々のほとんどが、新しい塾生を確保することにばかり執着し、今いる生徒さんや保護者さんのことを全く見ていないケースです。釣った魚に餌はやらないというと言いすぎですが、入塾してくれた時点でミッションコンプリートだと思っているフシがあります。

 ですから、私がこうした相談を受けたときにまず尋ねるのは「年間の退会数は何名ですか」という質問です。仮に、「生徒数が20~30名で、退会者は月1名程度です」なんて答えが返ってくるようであれば、心を鬼にして強めにまずこうお伝えします。

「チラシ云々より、生徒がやめない仕組みを作りましょう。」

 反応をよくするためにチラシにいいことばかり書いて、実際の中身が伴ってないのであれば、はっきり言ってそれは詐欺です。
そう言われると、カチンとくる方も多いと思いますし、私も心苦しい気持ちもあります。

 しかし、そうした指摘を客観的かつ謙虚に受け止め、中身を改善できない・するつもりがないのであれば、塾をやってはいけないと思います。チラシに騙されて入塾してしまった生徒さんや保護者さんを不幸にするだけです。私個人は、そんな人を食い物にするような塾は潰れてしまったほうがマシだと思います。

 ずいぶんと毒を吐いてしまいましたが、こうした意識の部分はスタートラインであり、ここを掛け違えると、その後に何をやっても表面的な対策しかできなくなります。もし「ドキッ!」とした方がおられたら、ぜひ意識なさってみてください。

退塾・退会数の目安となる”退会係数”

 さて、退塾・退会数の目安ですが、私なりのシンプルな計算法があります。
昨年度のMAX生徒数と年間退会数(非受験生)は分かりますよね? この「年間退会数÷MAX生徒数」から出てきた数値が、退会係数です。弊塾の場合、弊塾であればMAX時が80名、年間の退会数が3名でしたので、3÷80=0.0375です。
仮に同じ生徒数80名で退会数が8名だったら、退会係数は8÷80=0.1。退会数が12名だったら、12÷80=0.15となります。

 それを前提に、私が基準としている目安は以下の通りです。
 ==============================
  退会係数 0~0.05  ・・・内部充実がきちんと出来ている塾
  退会係数 0.05~0.1  ・・・内部充実がまあまあな塾
  退会係数 0.1~0.15     ・・・内部充実が甘い塾
  退会係数 0.15以上       ・・・内部充実ができてない塾
 ==============================

 一度、あなたの教室の退会係数を算出してみてください。

 ちなみに集客がらみのご相談に来られる塾さんのほとんどが、退会係数0.15以上です。
やはり、生徒数を増やしたいと思うのであれば、まず生徒さんが辞めない教室作りを始めてみましょう。

 成績アップするためにどうすればいいか、生徒さんが通いやすい塾にするためにはどうすれば良いか、保護者さんに満足してもらえるように私たちがどう接していくか。やり方は色々あるはずです。何度も何度も掘り下げ、突き詰めていけば、退会は必ず減ります。これを続けることで、塾の評判が良くなり、紹介の問い合わせも増えるはずです。

 この状態でチラシを入れれば「あっ、あの評判のいい塾だ」ということで、チラシのレスポンスも飛躍的にアップします。
「退会が3名出たら、入会を3名増やせばプラマイゼロ」という発想は今すぐ捨ててください。それはプラマイゼロではありません。明らかにマイナスなのです。

 集客とは「お客を集めるのではなく、お客が集まる」ことだと思います。人が集まってくれる中身を作らない限り、あなたの塾の未来はありませんよ。一緒に頑張って内部充実を高めていきましょう!

 

 

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事例_秀英予備校様

教師自身が同僚や保護者に勧めたくなる機能であれば、きっと校舎業務の改善に直結します。

秀英予備校

代表取締役社長

渡辺 武 氏

本社

静岡県静岡市

対象

小学生、中学生、高校生、高卒生

集団指導

映像授業

個別指導

使用機能

LINE連携

お知らせ

お問い合わせ

課題

保護者への連絡が電話に依拠しており、時間がかかる割に、留守番電話にメッセージが残るだけとなり、コミュニケーションが”入れ違い”がちに。

効果

電話の時間を効率化することができたと同人、保護者から「時間を選ばすに確認・返信ができる」「今までより相談しやすくなった」と喜びの声が。

<秀英予備校の紹介>

静岡県静岡市に本部を置く、小学生、中学生、高校生を対象とした学習塾・予備校。現在では全国24都道府県に、約300の校舎と700人の教師を抱え、生徒数は約25,000人に達している。集団授業のほかに個別指導、映像授業など幅広い授業スタイルを揃え、小・中・高を通した持続的な学習サポートを目指している。

<今回お話をお伺いした方>

ITシステム課 課長 手塚喜紀氏 (左)
2003年入社。大学受験部、新規事業本部を経て、ITシステム課へ。社内グループウェアやeラーニングシステムのリニューアル、授業用タブレットの導入を担当。

ITシステム課 上級プロフェッショナル 清水志帆氏(右)
2011年入社。約6,000台の授業用パソコン・タブレットの調達および管理。システム開発や各種ツールの導入、ユーザーサポート全般を担当。

生徒数2万名を超える「大規模運用」

手塚氏:
 私たちの塾では、2019年10月に小中学生を対象にコミルの本格導入が始まり、翌年の4月には高校生の運用も開始しました。コミルは学習塾の運用に合わせて開発されており、多くの教師や保護者から「とても使いやすい!」という声が寄せられています。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う学校の休校など、保護者の不安が高まっている状況においても、コミルを用いた情報提供やコミュニケーションによって信頼関係を維持することができました。コミルが無ければ、目まぐるしく変化する緊急事態に迅速に対応することは難しかったと思います。

清水氏:
 特に高校生の運用は世界的な混乱の中でスタートを切る形となりましたが、休講やオンライン授業の連絡ツールとして活躍し、たくさんの感謝の声を頂きました。

 秀英予備校の場合、小中学部だけでも生徒数2万名を超える「大規模運用」です。導入に際しては、既存システムとのデータ連携、権限構成の検討、インフラの準備など、技術的に検討すべき事項がありました。これらの点は、コミル開発担当者による高度な技術サポートによって、着実に解決することができました。

 次に運用面の課題として、多くの保護者と約700名の教師が一斉にシステムを利用する必要があります。新しいツールをすぐに使いこなせる方もいれば、苦手意識を持つ方もいます。その全員の足並みが揃うように何ができるか? これについても手厚いアドバイスがあり、校舎数を限定した試験運用や社内向け説明会、保護者会での登録案内などを行い、短期間で本運用を開始できました。まずは現場からの好評の声にホッとしています。

「シンプル」「全体最適」「持続可能」

手塚氏:
 システム部門としてコミル導入を検討する際に、特に3つの条件を重視しました。1つ目は「シンプル」であること。どんなに強力なツールでも、仕組みが複雑で使いこなすための努力が必要になるものでは、かえって教師の負担になってしまいます。
 2つ目は、「全体最適化」ができること。生徒・保護者を含めた塾に携わる全員がバランスよく恩恵を得られるものを探していました。
 そして、3つ目は「持続可能」であること。システム導入はゴールではなく、そこからがスタート。利用者の負担、管理上の作業負荷、維持コストなどを考慮して、継続的に利用できることが重要です。

 コミルはこれらの条件をすべて満たしていました。学習塾の運営経験がある開発者によるシステム設計に加え、熱意のある提案やアドバイスが強力な推進力となり、驚くほど自然に教室の運営に馴染んでいきました。

 いまでは塾生の約95パーセントが登録しており、秀英予備校にとって、重要な教育サービスの一つとなっています。

生徒と向き合う時間をつくり出したい

清水氏:
 初めてコミルを触った頃を振り返ってみましょう。まずは本導入前に一部の校舎に限定して試験運用を行いました。一般的に試験導入は現場にとって業務負荷が高く、依頼する側も心苦しい面があります。しかし、コミルの場合は「私の校舎で使ってみたい」という声が集まり、驚かされました。

 若手の教師が業務用タブレットを使って楽しそうにコミルを使いこなす様子に、周りの皆が引っ張られる形でどんどん導入準備が進んでいきました。多くの人が関わる大規模導入であればこそ、現場の声を信頼することが重要だと学びました。

手塚氏:
 「どのように使えば生徒や保護者のためになるか」を試行錯誤しながら周囲と相談する教師の様子を見て、近隣校舎の情報を互いに閲覧できる権限構成に変更しました。自分の担当校舎や生徒だけでなく、「秀英予備校の社員として協力し合う」という良い文化がコミルの中でも機能していると感じます。
 さらに試験導入に参加した教師にアンケートを取りました。もっとも重要と考えていた項目は「(コミルの各機能について)周囲に勧めたいと感じますか?」という質問への回答です。どの機能もとても高いスコアでしたが、特に「お知らせ・お問い合わせ」は殆ど満点と言える結果でした。

 教師自身が同僚や保護者に勧めたくなる機能であれば、きっと校舎業務の改善に直結します。このスコアが高い機能から優先的に使い始めることで、導入の効果を実感しやすくなったと思います。

清水氏:
 秀英予備校の教師は「生徒に向き合いたい。生徒の力になりたい」という熱い想いを持っています。コミルを通して、それを伝えることで保護者との信頼関係はさらに深く強固なものとなりました。

 サービス名の「コミル」は「子を(一緒に)見守る」に由来していると聞きました。とても素敵な名前ですし、まさに教師と保護者が共に子どもの成長を見守る関係性を作ることを支援するツールだと感じています。

 教師の仕事は授業以外にも山のようにあります。それらをひとつずつ、コミルの機能で軽減し、教師が働きやすい環境を作っていきたいと考えています。

手塚氏:
 私も同じ意見です。教師のエネルギーを事務作業で削いでしまうのではなく、少しでも多くのリソースを生徒や保護者に集中できる環境に変えていきたい。

 社内にシステム部門が置かれた理由は、「教師の言葉(要望)とシステム会社の言葉(技術的な専門性)の双方を理解した橋渡し役となり、教育業界の大きな変化に迅速に対応するため」です。この役割を果たす上で、コミルは強力なツールになると感じています。

清水氏:
 必要性の高い機能から段階的に導入していますが、教師から「この機能も使いたい」という要望がたくさん届いています。なるべく早く対応できるように頑張ります。

手塚氏:
 今回の新型コロナウイルスの衝撃は大きく、旧来の対面式の面談や授業、保護者会、各種業務を考え直す必要に迫られています。しかし、これを機に新しい形の「密な」コミュニケーションや業務デジタル化の可能性も具体的に見え始めています。

 新しい時代に求められる「コミュニケーション」と「校舎業務」の劇的な変化に、コミルであれば応えてくれると期待しています。

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事例_AIE英語専科様

「AIEが 『理想とする学校を実現するには、 コミルを導入するしかない!』と、出会った瞬間、衝撃が走りました。」

AIE英語専科

代表取締役

橋本 隆志 氏

本社

兵庫県神戸市

対象

幼児、小学生、中学生、高校生、一般

集団指導

個別指導

使用機能

LINE連携

お知らせ

指導報告書

入退室管理

成績管理

カード決済

課題

スタッフの未収金の回収業務が負担になっていた。また、保護者への連絡は、メール送付後電話の2段階にしていたが、なかなか保護者メールや電話で連絡がつかない保護者が多かった。

効果

クレジットカード払いを導入し、未収金回収業務を効率化。保護者からの連絡はComiruに一本化し、コミュニケーションもスムーズに。

<AIE英語専科の紹介>

「真の国際人」を育てることをモットーに、兵庫県内の4つのキャンパスで英語教育を実施。幼児から大学生、社会人まで幅広い層に、英語の楽しさと可能性を教えている。
1993年のオープン後、6年間で計1,000名を超える英検合格者を輩出。小学3年生で英検準1級、小学5年生で英検1級合格のほか、国内外への海外有名大学への合格者を多数出すなど、兵庫県No1と確かな実績を誇る。

課題は未収金回収 解決の 一手に

 コミルを知ったきっかけは、定期的に参加している経営勉強会で聞いたポパー代表によるコミルの説明を受けているときでした。聞いた瞬間、「これしかない!」と衝撃が走りましたね。
 どこの塾も抱えている課題の一つだと思いますが、AIEも他塾同様、授業料の未収金回収に頭を悩ませていました。弊社は当時、時流に乗って拡大を続けておりましたが、教育体制を充実させていく一方、請求や入金チェックの管理が行き届かず、未収金の回収という課題を抱えていました。 また、弊社はもともと、子供たちの可能性を伸ばすために英語教育を行いたいという情熱から始まった学校。そのため、日ごろ「先生」と呼ばれて親しまれているスタッフにとって、この未収金回収という業務は心理的に抵抗が大きいものであるという問題もありました。
 しかしながら、学校経営もビジネスであり、いくら高い理想や熱意があっても、経営が立ちゆかなくなってしまえば、それを叶えることができなくなってしまいます。
 そんな時に出会ったのがコミルでした。また、本来のコミュニケーションツールとしての機能も申し分なく、口座引き落としではなく、クレジットカードによる支払対応で未収金問題を解決してくれる機能に惹かれすぐに導入を決意しました。

時流に合わせたコミュニケーションツールへ

 我々塾がサービスを提供するのは目の前の生徒です。しかし、生徒だけでなく、授業料をお支払いいただいている保護者の満足度も重要なのが、学校・塾というビジネスの特徴です。そのため、保護者とのコミュニケーションをどのようにとるかは非常に大事であり、どこも苦慮されている点だと思います。弊社も他塾同様、頭を悩ませている課題の一つでした。
 AIEでは、保護者の方へのお知らせは、メール送付後、確認電話という2段階体制で実施していました。理由は主由流はにLINE等のSNSが主流になり、メールに気付いてもらえないことが多く、重要なお知らせが伝わっていないためです。しかし電話は保護者との時間帯が合わないことも多く、メールと電話という2度の連絡は時間も要し、効率が良いとは決して言えませんでした。時代の変化に合わせ、我々が変化していかなければいけないと日々感じていました。

事前の環境作りで スムーズな導入に成功

 現場にとってもメリットが十分に感じられたため、導入決定をしました。しかし、弊社ではチャットでのやりとりが初体験のスタッフがいるなど講師の年齢層が幅広いこともあり、実装にあたって、まずは環境作りから始めました。
 例えばコミュニケーションツールに慣れてもらうために、プライベートのやり取りはLINEを、業務連絡はChatworkといったように簡単なやり取りから実施しました。
 すると初めは戸惑いを見せていた一部講師陣も積極的に使ってもらうことで、次第に慣れていく様子が手に取るように見てとれました。また嬉しいことにコミュニケーションツールのメリットである『双方向性と、やりとりの見える化』も同時に図ることができました。今まで受け身であったスタッフに対し、周りから「〇〇さんはどうですか?」などと問いかけが来ることで、自分事として捉えてくれるようになり、皆で議題を進めていくことができるようになりました。 そうした経験を積んだ上でのコミル導入だったので、活用度に強弱はあれど、拒絶反応や操作に難色を示すことなく導入をスタートすることができました。
 もっとも、課題があるのも事実です。普段からITツールに慣れ親しんでいるスタッフのほうが、様々な機能をスムーズに使いこなせている印象を受けます。
 今後はITリテラシーの高いスタッフからノウハウを全社的に共有していく仕組みをつくることで、徐々に全社でコミルを使いこなせるようになっていくと良いと考えています。

生徒との時間共有& 密度UP

 実は、コミルを導入したことで、嬉しい誤算がありました。
 先ほどもお話ししたように、元々は業務効率化をすることで、ここ最近注目されている「働き方改革」もあわよくば期待していたのです。
 しかし実際は、コミルを使用することで削減できた時間を、生徒に向き合う時間に充てるスタッフばかり。生徒とのコミュニケーションはとても密度の濃いものとなりました。
 思ってみれば、先代社長は本当に面倒見がいい人で、公教育ではなかなか手が回らない細かいサポートを行える学校を理想としていました。しかしながら、できるだけ多くの生徒にそうした機会を提供しようとすればするほど、付随業務が増え、結果理想とは相反し、目の前の子どもに向かい合う時間が減るというジレンマに陥っていたのです。
 密度の濃いコミュニケーションの結果得られたのは、退校生の数の減少。なんと塾では願ってもなかなかない、退校生0人という月が何カ月も続いているキャンパスも出てきました。それだけでなく新規入校生も増加し、嬉しいことに昨年は生徒数が過去最高を達成することができました。 コミルのおかげで、これからは思う存分、AIEの理想とする教育の実現を目指していけると思います。

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中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.7】

中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.7】
「チラシの見直し方」

著者の紹介

森 智勝

(もり・ともかつ)

塾生獲得実践会 全国学習塾援護会 主宰 

17年間の塾経営を経て、塾専門のマーケティング勉強会(塾生獲得実践会)を設立。机上の空論ではなく、現場主義を貫くマーケティング手法を全国の塾に提供している。経営コンサルタント、スタッフ研修等を専門に行っているが、特に不調塾の立て直しには定評がある。

興味を持たれない「イメージチラシ」と「メニューチラシ」

チラシの目的は「塾に興味を持ってもらうこと」です。そのためには最も大きな文字であるキャッチコピーが重要だと、前回お話しました。逆に、読者(保護者)から興味を持たれないチラシの代表が「イメージチラシ」と「メニューチラシ」です。

イメージチラシとは例えば、「カワイイ女子生徒」の写真(有料ポジ)を使用し、「頑張る君を応援します!」等の抽象的なキャッチコピー(キャプション)で構成されているチラシです。あるいは、ハードルを跳び越える陸上選手の写真に、「未来に向かってジャンプ!」などという構成も典型ですね。

見た目はカッコいいのですが、塾の特長が全く伝わりません。プロのデザイナーに依頼すると往々にして生じる現象です。彼らはデザインのプロなのであり、塾運営(塾生獲得)のプロではありません。

メニューチラシとは文字通り、「塾生募集」の大きな4文字と時間割、コース、授業料で構成されているチラシです。デリバリのピザ屋ならばいいのですが、一般的な外食の場合、メニューは店内に入ってから提示するものです。

ましてや塾は、顧客単価(生涯売上)が高額になるビジネスです。月額2万円、年額30万円、平均在籍年数2年と仮定すれば、総額60万円の商取引です。1枚数円のチラシにメニューを書いただけで、60万円の商品を買ってもらおうというのは無理があります。

チラシは地域の人(将来の見込み客)に対して、自塾を認知してもらうためのツールです。自分の子どもが塾年齢に達していない保護者が、イメージチラシやメニューチラシに興味を示すことはありません。また、塾を検討している保護者にとっても、あまり効果的なチラシではないでしょう。(もっとも、既に地域で評判を作っている塾ならば、どんなチラシを配布してもそれなりの反応があるのですが…)

ターゲットを思い浮かべてキャッチコピー&リード文を作る

こうした失敗は、全ての生徒(保護者)を対象としてチラシを作成してしまうことに原因があります。

以前にもお話しましたが、塾は卵や牛乳を売っているのではありません。どんな塾にも得手不得手があります。自塾を必要とする20%の生徒(家庭)を対象とした塾作りをして、その20%の人が「この塾は私(我が子)のための塾だ」と思わせることが必要です。

ならばチラシも、その20%の人に向けての情報発信であるべきなのです。あなたの塾がターゲットとする20%の生徒を思い浮かべて、彼らに向けたメッセージをキャッチコピー&リード文に込めてください。

「読者に求める次の行動」を意識してチラシ作りがポイント

後は細かいことの羅列になりますが、重要なことは「読者に求める次の行動」を意識してチラシ作りをすることです。

例えば電話での問合せをしてほしいのなら、電話番号を大きく表示することです。そして「受付時間」「担当者」を明記して、「お気軽にお問い合わせください」のコメントも忘れずに。これらは全て、電話を掛ける時の心理的障壁を低くする手段です。我々が思っている以上に、塾に電話を掛けるという行為は心理的負担が大きいものです。

また、ホームページに誘(いざな)いたいのであれば、QRコードの表示は必須でしょう。母親の90%はスマホを持っています。電話で問い合わせてくる保護者は、間違いなく事前にホームページを閲覧しています。

そこでホームページです。

ホームページの制作コンセプトはチラシと変える!

今や、ホームページを持っていない塾は稀ですが、効果的なホームページを持っている塾も稀です。ホームページの特長を全く生かし切れていないのです。

チラシは「塾に興味を持ってもらうこと」が目的でした。それに対してホームベージは「塾を疑似体験してもらうこと」が目的です。それなのに、ホームページの制作コンセプトがチラシとほとんど変わらない塾が多いのです。

例を挙げると、チラシは全て文字と画像で構成されます。ところがホームページも文字と画像で構成されている塾が多いのです。それどころか、同じソースをチラシとホームページに載せているケースも珍しくありません。せっかくチラシで興味を持った保護者が、ホームページを覗いて全く同じ文章と写真が載っていたら…ガッカリします。そこで「手抜き」を感じた保護者は、肝心の授業・指導も手抜きをしていると思ってしまいます。これでは逆効果です

原因は、チラシを作成するときにホームページから内容をコピー&ペーストしてしまうことです(あるいはその逆も)。

ホームページはチラシとは比べ物にならないくらいの情報量を掲示できます。その代表が映像です。例えば塾長挨拶。文字で掲示するのではなく、塾長自らが登場する映像で生の声として届けることができるのもホームページです。授業の様子やイベントの様子も映像で伝えたいものです。(ただし、生徒の肖像権には要配慮)今はYouTube等を利用することで、簡単に映像をホームページに掲載することができます。ぜひトライしてください。

中小・個人塾の場合、塾=塾長です。塾長がどんな人で、どんな考え方を持っているかを、保護者は最も気にしています。ですからチラシでもホームページでも、塾長が顔と名前を堂々と出すべきなのです。それが安心感を生みます。

さて、チラシ&ホームページを経て、いよいよ塾に問い合わせの電話が掛かってきます。ここが保護者と塾のファーストコンタクトであり、最も重要な局面です。次回、電話対応の肝について詳しく解説します。

 

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コロナが落ち着いても続けたい、オンライン5つのメリット!

コロナが落ち着いても続けたい、オンライン5つのメリット!

著者の紹介

安多 秀司 (やすた・ひでし)

株式会社リアル・パートナーズ、株式会社個別教育フォレスト

ゴールフリー、スタンダードカンパニーを経て独立。個別教育フォレストを開校。個別指導歴17年。自塾を運営する傍ら、全国各地で個別指導塾の経営コンサルティングやセミナー登壇などにも精力的に取り組んでいる。

弊塾(個別教育フォレスト)は、緊急事態宣言の発令後、直接の対面授業を全てストップし、4~5月の間、完全オンライン授業に移行しました。6月からは基本的に対面授業に戻しましたが、一部オンライン授業を継続しています。

おそらく同じような対応を取られている塾さんは多いと思いますが、これまでをふり返ってみて、オンラインによる教室運営のメリットがいくつか見えてきました。

オンライン授業を実践して見えてきたこと

実際、コロナという予期せぬ外圧によって始まった取り組みではありますが、怪我の功名とでも言うのでしょうが、新しい発見もたくさんあったのは事実です。もしかしたら、まだまだ新しいアレンジのチャンスが眠っているかもしれません。私なりの気付きを5つのポイントにまとめましたので、今後の貴塾運営のヒントになれば幸いです。

なお前提として、弊塾は一般的な1:2の個別指導塾です。それを前提とした事例ではありますが、集団指導や自立型の塾さんにおいても十分応用がきくと思いますよ!

さて、その5つのポイントとは以下の通りです。大きく「塾および講師」「生徒さん」に分けて、それぞれのメリットを整理してみます。

<塾・講師側のメリット>

  1. 講師が帰省先でも授業ができ、シフト管理が楽になる
  2. 育休中のスタッフでもテレワークが可能になる
  3. 指導スキルが向上する

<生徒さんのメリット>

  1. 不登校の生徒さんでも授業が行える
  2. 部活で最終コマが間に合わない生徒さんも授業が受けられる

オンラインのメリット ~塾・講師編~

【その1】講師が帰省先でも授業ができ、シフト管理が楽になる

これはとても大きなメリットでした。弊塾では、実家を離れて一人暮らししている学生講師が全体の6〜7割を占めますので、帰省時のシフト管理は毎年ひと苦労だったのです。1日や2日くらいの休みなら大丈夫ですが、特に長期帰省時は「今週・来週はまるまるシフトに入れない」ことも多いですからね。

しかし、オンライン指導が可能になったことで、この問題が解消します。「講師は帰省先から、生徒は教室から」という形を作ることができました。

実際、講師も帰省したところで、1日中予定が詰まっているわけではありません。物理的に「教室に出勤できない」だけであって、「仕事する時間がない」わけじゃないんですよね。講師としても、帰省中は収入が途絶えてしまうわけですから、「帰省中もできて、アルバイトもできる」のであれば、願ったり叶ったりです。

さらに、シフトに穴が開かないことで、もちろん生徒さんも受講しやすくなります。私たち塾側も、帰省する講師も、生徒さんにとっても、みんなにメリットがある最強モデルではないでしょうか。コロナ自粛や移動制限もいったん落ち着きを見せ始めたいま、コロナに関係なく今後も活用できると思います。

【その2】スタッフのテレワークが可能になる

全国的にテレワークの認知や推進が進みましたが、塾も例外ではありません。上記の講師シフトも、言わばテレワークですしね。

ただ、弊塾でのテレワーク実践は講師以外にも波及しました。今年の4月から育休復帰したスタッフです。当初は、保育所にお子さんを預ける形で復職してもらうことになっていましたが、送り迎えの負担や、急な発熱などのトラブルもあるでしょう。そこで、塾内のオンライン環境を整えるのに乗っかる(?)形で教室勤務を減らし、その分をテレワークに振ったのです。

これも効果はてきめんでした。むしろテレワークにすることで、稼働時間を増やすことができたのです。

本来の教室勤務では夕方までの勤務だったのですが、テレワークで自宅にいながら業務ができます。本来は退勤後であった夕方以降の時間帯で、オンライン授業を行ってもらうことが可能になったのです。また、大学の学校推薦・総合型選抜(旧推薦・AO)入試の志望理由書の添削や、オンラインによる1on1セッションも手伝ってもらえるようになりました。

もちろん「自宅でも仕事しろ!」とかそういう話ではありませんよ。「もっと働きたいけど、家庭の事情でその時間が作れない」というスタッフさんにとって、とても良いシステムだということです。「対面でなくてもできること」って、意外と多いんだなと感じました。

【その3】指導スキルが向上する

オンラインは、対面と比べたときに圧倒的に「視覚」から得られる情報が不足します。対面指導では、講師は生徒さんのほぼ真横にいますから、彼らのいろいろな情報を目から得ることができます。例えば鉛筆の動き具合、ノートに書いている途中式、表情などです。私たちは、こうした視覚情報から得たことを、授業に反映していきますよね。

そのためオンラインの場合、「隣にいない=視覚情報を得にくい」という部分をカバーする必要があります。例えば対面時に比べ、より具体的に、より的確に問いかけるなどする必要があるのですが、弊塾の講師たちはこの能力が向上しました。

この経験が、対面になったときも活きています。対面授業しかやっていなかったら、なかなか身につかない(気付けない)意識だったので、とても役立っています。

オンラインのメリット ~塾・講師編~

【その1】部活で最終コマが間に合わない生徒さんも授業が受けられる

全国大会を目指すようなガッツリ系の部活に所属する生徒さんは、遅くまでその練習に汗を流します。しかし、一度自宅に帰って荷物を置いてから弊塾に向かうと、最終コマ(20時40分)開始に間に合わないことがありました。生徒さん自身も「自宅でオンライン授業を受けられるのは、とても楽で便利!」と言っていました。確かに自宅で着替えることもできて、ほっと一息ついてから授業に臨めるのはとても大きいですね!

【その2】不登校の生徒さんでも授業が行える

弊塾では、不登校で学校に通えていない生徒さんが何名かおります。これは賛否両論あると思いますが、私自身は「学校に行きたくなければ行かなくて良い」派です。ただ不登校の場合、「学校は休んでいるのに塾には行く」という状況に抵抗がある生徒さんが多いのも事実です。繊細なメンタルの部分なのですが、気持ちはとてもわかります。ちなみに、学校でも「不登校の生徒さんに(オンラインで)学習指導する機会ができて良かった」という事例は多数あったようです。

また、塾であっても対面の授業が苦手で参加できないという生徒さんもいます。そうした生徒さんも、オンライン授業なら参加が可能です。実際、オンライン授業が確立できていなければ、この生徒さんと授業することはできませんでした。オンラインにして良かったな、と思ったことの一つです。

以上、オンライン授業を行ったことによる運営メリットです。塾さんによっていろんなケースがあるとは思いますが、少なくとも私はオンライン授業を導入・実施したことで「教室運営の幅が広がった」のは間違いないと思います。

 

 

対面授業もオンライン授業も、どちらでも対応できるようにしておくことで、外的要因に左右されにくい「強い」運営が行えるようになるはずです。「コロナが過ぎ去ればオンラインは不要」とは考えずに、せっかく良いツールを手に入れたのですから、今後に活かしてみませんか!?

 

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中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.6】

中小・個人塾のためのマーケティング講座【vol.6】
「行動すると意欲が増幅する」

著者の紹介

森 智勝

(もり・ともかつ)

塾生獲得実践会 全国学習塾援護会 主宰 

17年間の塾経営を経て、塾専門のマーケティング勉強会(塾生獲得実践会)を設立。机上の空論ではなく、現場主義を貫くマーケティング手法を全国の塾に提供している。経営コンサルタント、スタッフ研修等を専門に行っているが、特に不調塾の立て直しには定評がある。

新規塾生獲得は戦略が必要

人(消費者)が購買行動をするにはいくつもの法則があります。前回お話した「感動の法則」もその一つです。

単価の低い商品ならば、衝動買いを誘うマーケティング手法があります。こんなTV通販を見たことがありませんか?

「こんな素敵な時計が1万円ですか? ではペアで揃えても2万円で済みますね」
「いえ、今ならペアで1万円です」
「まあ!」
「そして何と今回、この革製ベルトのペア時計を加えてもジャスト1万円の大キャンペーンです」
「ひぇ~!!!」

一般の主婦が衝動買いをする価格帯があります。データによると3,000円以下です。そのために通販商品は単価を3,000円以下にする工夫をしています。上記の時計も単価は2,500円です。健康食品や美容食品も、「初回に限り半額の〇〇円です」と、単価を3,000円以下にすることが通例です。いわゆる「まっ、騙されても惜しくない程度の価格」を設定するわけです。

ところが高額商品、例えば家や車はそうはいきません。そこで、別の法則を駆使します。人は、「行動することで意欲を増幅させる」という行動法則を持っています。

小さな成功体験が次に向かうモチベーションになる

慰安旅行で泊まった宿に卓球台があったとします。「課長、卓球しましょう」と部下に誘われ、気乗りはしなかったが付き合うことにします。そのうち汗をかき調子が乗ってくると、「よし、紙とペンを持って来い。トーナメント大会を開催するぞ。優勝者には俺がビールを振舞ってやる」と、自ら率先して動くことになったりして…。

よく、「その気にならないのに学習を強いても無駄だ」という人(保護者)がいます。それはある意味正しいのですが、では、自然と学習意欲が生まれるかと言えば、それは難しい。最初はある程度の強制力が必要で、その結果、小さな成功体験を持たせることです。その経験が自己肯定力になり、次に向かうモチベーションになります。「君はやればできる」ではなく、やって成果が出た時に「なっ、やればできただろう」と言ってあげることです。これを応用していきましょう。

塾によって授業料は違いますが、平均すると月に2万円、年間30万円程度になります。3年間通えばすぐに100万円という、家庭にとっては安くない買い物です。それをチラシ1枚で衝動買いさせようとするのは無理があります。そこには行動の法則を熟知した戦略が必要です。

何事も、最初の一歩に最もエネルギーを必要とするものです。最初の一歩を踏み出した人は、次の一歩に大きなエネルギーを必要としません。ハウジングセンターが「ゴレンジャーショ-」を開催するのも、新聞販売店が新規契約に洗剤や、時としてプロ野球の観戦チケットを付けるのも、その「第一歩」を促すためです。スーパーがチラシの冒頭に「卵1個、1円」と特売を表示するのも同じです。大きなファーストインプレッションを消費者に与えて、第一歩を踏み出してもらうことが狙いです。

詳しいことは今後の解説の中でお話しますが、少なくとも相手(生徒&保護者)に第一歩を踏み出してもらい、入塾までの階段を登ってもらう戦略が必要です。

新規塾生獲得までのステージ

新規塾生を獲得するまでの階段は、チラシ⇒ホームページ⇒電話問合せ⇒面談⇒体験授業⇒正式入塾となるのが一般的です。それぞれのステージに、「次のステージに踏み出してもらうための仕掛け(工夫)」をすることです。少なくとも、チラシから一気に入塾を求めるのは無謀です。(もう一つの獲得ルートである「紹介」については別項で解説します)

それぞれのステージの役割は次のようになります。

  1. チラシ …塾に興味を持ってもらう
  2. ホームページ …塾を疑似体験してもらう
  3. 電話問合せ …そこはかとない塾の信頼感を持ってもらう
  4. 面談 …確かな信頼感を(特に保護者に)持ってもらう
  5. 体験授業 …指導のクオリティを(特に生徒に)感じてもらう

こうした役割を意識して、それぞれのステージを構築していきます。

いよいよ次回から、具体的な手法についてお話を進めます。ただ、これだけは忘れないでください。ビジネスにとって商品力が全体の8割の重要度を占めています。クオリティの高い商品(授業・講師・カリキュラム等)の存在を前提にマーケティングは威力を発揮します。

最初のテーマは「チラシ」です。「最近は新聞をとっていない家庭が増えた」とか、「チラシの反応率が悪くなった」とかの理由で、チラシを「あいさつ程度」にしか投入しない塾が増えているようです。もちろん、その現象を否定はしませんが、それを理由にチラシ(新聞だけでなくポスティングやタウン誌)を軽視するのはお勧めしません。一般市場に「認知」を深めるツールとして、チラシはまだまだ有効です。また、チラシの内容を吟味することは、塾全体の吟味をする良い機会です。「まずは隗より始めよ」の言葉があるように、チラシの見直しから塾の見直しを始めることをお勧めします。

 

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【コロナ危機の中の学習塾】vol.6 WITHコロナの中の学習塾

~コロナ危機の中の学習塾~
vol.6 WITHコロナの中の学習塾

著者の紹介

多田 昭寛 (ただ・あきひろ)

個別指導研究会代表

塾業界に、「個別指導」という業態を全国 に広めた第一人者。大手進学塾専務、 大手個別指導塾代表取締役を歴任。現 在も、全国各地の学習塾の顧問を務める など精力的に活動。その教育論や実践 例を伝えるセミナーが好評を博している。

コロナ危機が学習塾に及ぼした6つの影響

コロナ危機が学習塾に及ぼした影響は、主に以下の6点に集約できます。

  1. 問合せの減少
  2. 退会の減少
  3. 売上の減少(客単価の減少)
  4. 通信教育の生徒数増
  5. 生徒・保護者のITリテラシーの向上
  6. GIGAスクール構想の前倒し

塾経営においては、甚大な被害をもたらしているコロナ危機ですが、実は影響は限定的です。むしろ、コロナ危機で、昨年までの塾運営ができないことによる判断ミスと業績悪化による心理的な悪循環が被害を拡大しています。

また、生徒・保護者へのコロナ危機の経済的影響や心理的影響をかってに推測し、判断ミスをおかしていることも被害を拡大しています。

上記の6項目を見ていただくと、生徒数・売上を減少させる要因は、問合せの減少しかありません。売上(客単価)の減少は、塾側の「保護者が経済的に困っているのでは。」と言う思い込みによって生じています。

【1】問合せの減少

まず、最も影響の大きい問合せの減少の分析から始めます。月ごとの問合せの減少は、3月から5月までは、軒並み50%~80%くらいまで問合せの減少が起きました。これは、全国的な現象ですが、感染者数が多かった都市部と少なかった地方では差が有ったようです。

私が住んでいる関西で言うと、大阪府が最も影響が多くて60%程度、奈良・滋賀などは70%から80%、兵庫や京都はその中間と言った状況です。

1学期の定期テストが終わった7月20日以降問い合わせは動きだします。しかし、8月と9月は塾によって明暗が分かれます。問合せが前年対比を大きく超えた塾と3月から5月と変わらない数字で、悪いまま推移している塾です。これには、コロナ感染者数が多いところほど戻りにくいと言う傾向は見られますが、それ以上に塾運営が影響しているように思います。問合せが戻った塾は、8月で前年対比150%から200%、9月で110%から120%程度です。戻らなかったところは、3月から5月までと同様です。

これは私の仮説に過ぎませんが、学校休校中にオンラインスクールなどを実施し、保護者の感謝の声が多かった塾は、問合せの戻りが早かったように思います。オンライン授業の満足度も大きく関わっているように思います。

しかし、最も注目すべきことは、同じ塾内でも教室間格差が大きかったことです。分かりやすく言うと20代の若手教室長の教室は問合せが前年対比を大きく割ったのに対し、30代以降のベテラン教室長、特に40代以上の教室長の教室では、問合せが前年対比を超えていたことです。昨対150%を超えた教室も有りました。

30年前、少子化が始まる前は、塾は保護者が選ぶものでした。受験競争が激しく、塾選びは真剣勝負だったのです。しかし、少子化が始まり、受験競争が緩やかになると、徐々に友達紹介が有力になって行きます。今から10年ほど前の文部省の調査で、なぜ今通っている塾を選びましたかと言う問いに対し、1番多かったのが、「近いから。」、2番目が、「子供がそこに行きたいと言うから。」でした。つまり、塾選びの基準が、保護者紹介から友達紹介に切り替わっていたのです。保護者が塾選びを真剣に考えなくなっていたのです。媒体分析で紹介を「友達紹介」と「兄弟姉妹」の二つに分類し、保護者紹介が無くなっている塾もあります。そのくらい、保護者紹介が減っていたのです。ただし、中学受験はいまだに保護者紹介ですし、保護者が塾を選びます。これが、中学から高校へと進むにつれ友達紹介の比重が大きくなるのです。

年齢によって受信数に差が出たのは、学校が休校していて、友達紹介が作れなかったからです。最近の塾の教室運営、特に個別指導塾の教室運営は、友達紹介を生み出しやすい、楽しい教室作りをしてきました。若手社員はこれしか知りません。一方、今まで業績が良くなかった、旧来の保護者紹介に力をいれる教室運営をしてきたベテランが、学校休校で急浮上してきたのです。保護者紹介を作るには、保護者への説得力が必要で、教務力を求められます。ですから、保護者紹介を作れる社員は、もともと優秀な社員です。しかし、友達紹介が主流の時代には、業績を伸ばせませんでした。若手に負けてしまっていたのです。それが、学校休校によって保護者紹介に切り替わることで、いきなり急浮上してきたのです。

コミルを使って保護者との連携を深め、退会を減らして生徒数を増やしてきた教室でも、問合せに関しては友達紹介を中心に教室運営をしてきた教室は、保護者連絡が生徒のことに関する情報のやり取りだけで終わってしまいます。保護者の不安を解消するような情報交換ができず、保護者と連絡を密にしていても、問合せを増やせていません。

今、塾の社員が不安なように生徒の保護者も、生徒のことだけでなく、自分の将来や家族の将来のことが不安です。コロナ危機で、地球温暖化や世界の人口爆発と食糧危機など、将来に待ち構えているグローバル化した危機が襲って来る不安が増大しています。近い将来では、日本の景気はどうなるのか、リストラにあわないか、賞与はもらえるのかなど、不安は尽きません。その相談相手になる人はいないのです。その話し相手になるだけで保護者紹介は増やせると思います。教務力を付けるには時間がかかりますが、それ以外の情報は調べれば短時間で蓄積できます。生徒・保護者の経済的な状況や心理的な状況をコミルアンケートで調査し、それに対する不安解消の回答を個別に行うことによって、WITHコロナの時代にも問合せを昨年よりも増やせると思います。

9月の最新のデータでは、友達紹介が復活している傾向が見られます。大手塾の教室間の問合せ数の順位が、元に戻っているのです。若手の教室長の問合せが増え、ベテランの教室長の問合せが減少傾向にあります。

それでも、保護者は、今、全てを根本から見直そうとしています。塾選びも真剣に考えるようになっているのです。友達紹介は今後も重要でしょうが、保護者紹介も大事にしていく必要があります。

【2】退会の減少

内部的な特殊事情がない限り、どの塾も退会は減少しています。昨年の3分の2くらいの退会でおさまっています。これは、退会が実は転塾だったと言うことをあらためて気づかせてくれます。これをただラッキーなことだと考えず、今後退会を防止するにはどうしたらいいかを考えるヒントにしなければなりません。今まで、生徒・保護者の満足度を上げるしか退会の防止策はないと考えてきましたが、今後は、教室の近くの他塾情報にも敏感になる必要があります。生徒・保護者はそのような他塾情報も収集しながら塾選びを始めていると考えなければなりません。

たまたま、動きが鈍って、他塾への問合わせもしなければ退塾もしなかったのですが、裏を返してみれば、それだけ塾選びに慎重になっていると考えられます。ホームページなどからの他塾情報、生徒・保護者の口コミによる他塾情報に敏感になることで、転塾の危険性を認識しながら教室運営をしなければなりません。

【3】売上の減少(客単価の減少)

生徒数が減っている塾が多いので、売上の減少は広範囲で起こっています。しかし、客単価は塾によって大きく異なります。特に例年の夏期講習にあたる売上は、昨年の50%以下から120%程度まで、差が開いています。その原因は夏休みの短期化ですが、売上を増やしているところは、6月最初から、土曜や日曜を使った臨時の講習会を開いています。時期的に言うと1学期期末のテスト対策と銘打って臨時講習をやったところが多いと思います。6月、7月で昨年の夏期講習の40%から50%を7月の期末テスト前に確保しています。

このような塾は、お盆休みや土曜・日曜を返上して8月いっぱい、塾によっては9月に入っても夏期講習をやっているために昨年よりも大きな売上を獲得できたのです。一方夏期講習は夏休み中にやるものだと言う既成概念を捨てきれなかった塾は大きく売上を落とすことになりました。そのような塾は、3月から6月も大きく売上を落としてきていますので、痛手はさらに広がっています。問合せが減少したままですから、3月から5月の学校休校中の売上減少は、回復するどころか月ごとに減少幅が拡大しているのです。それに夏期講習の売上減は致命傷になりかねないほど、塾経営に痛手を与えています。

この塾間の客単価の差はどこから来ているのでしょうか。教育費の支出は3月が昨対135%、4月が130%と言うデータが有ります。家計簿アプリのビッグデータ解析によるものです。今、銀行の個人預金の残高は、UFJ銀行全体で昨年より2兆5千億円増えています。ある地方都市の1支店で、100億円増えています。子供一人当たりの教育費の支出もここ5年ほど伸び続けていました。塾ではあまり意識していなかったと思いますが、少子化の中、平均の年間所得が減少する中、塾の売上を維持して来た原因は、教育に対して保護者の真剣度が増し、一人当たりの教育費が増えていたからです。

そんな中、3ヶ月近く学校が休校し、保護者は子供の学習状況に大きく不安を感じていたのです。ですから、6月から塾が臨時講習会を開くと、夏期講習よりも参加率が高かったのです。

大手塾は、4月くらいから全面的にオンライン授業に切り替えた塾が多かったのですが、感染率が比較的高かった大阪でも、コミルで保護者の意見を聞き続けていると、オンライン授業を希望する人は、3月で10%、4月で20%、5月で30%程度です。けっこう感染率が高かった大阪でさえ、学校休校中で外出自粛要請が出ている中でも、7割以上は教室での授業を希望していたのです。

保護者の状況を把握しないまま、かってに保護者はこうだと決めつけて、経営判断を間違った塾が多かったと言うことです。ニュースで流れて来る、飲食業や観光業の窮状を全体に広げて考えた結果でしょう。具体的に、塾に通ってきている生徒・保護者の状況や考え方をしっかり聞き取り、塾の経営判断をしていかなければ、今後も大きな判断のミスが続くだろうと思います。

3月から8月にかけて分かったことの一つに、土曜や日曜でも必要であれば塾に来てくれる、お盆休みさえ生徒は塾に来てくれるということです。これも、今までの常識を捨てる必要がある点です。いつでもできるということではありませんが、必要なら土曜、日曜も使えるということは、塾の経営については大きなプラスです。教室の稼働率を大幅に上げることが可能になります。

塾の経営や教室運営も既成概念を捨て、生徒・保護者と共に考えて行く時代に入ったのではないかと思います。それが、いつでも生徒・保護者の考えが聞けるネット環境が整った時代の塾経営ではないでしょうか。

【4】通信教育の生徒数増

今年、3月と4月の家計簿アプリのビッグデータ解析による教育費の前年比35%アップと30%アップは、学習塾への支出増大ではありません。前回の、「コロナ危機の中の学習塾」と言う文書の中でも記したように、3月から5月までの学習塾の売上は、地域によって塾によって差が有りますが、10%から20%ほど減っていました。教育費の支出増大は、外出自粛要請が出る中で、教室に通う必要がある塾ではなく、家庭で受講できる通信教育への支出だったのです。スタディサプリは、3月までの会員数は60万人程度で簿増だったのですが、4月70万人、5月80万人といった増え方をしています。家庭の支出が3月でも、会費は前払制ですから、スタディサプリの会員数は4月に増加することになります。Z会の売上は、2019年の第一四半期(4月~6月)2、386億円、2020年の第一四半期2,738億円で、14.7%増えています。進研ゼミやこどもチャレンジを運営するベネッセの売上もここ数年順調に伸びてきています。あらためて調べてみると、通信教育の数は増え、それぞれの会員数も伸び続けています。Z会も高校生だけでなく、中学生、小学生も対象にするようになっています。

通信教育と言えば、昔は文字通り、紙の教材と問題を郵送し、通信添削をやるものでしたが、今は全てオンラインでの授業動画の配信、デジタル教材の配信、そしてオンラインでの個別指導又は個別の学習進捗管理がオプションで付いています。その料金も安く、スタディサプリでは、月額1,980円で全教科見放題、個別の学習進捗管理が付いて9,800円です。通信教育では、塾と比較すると、格安の料金が当たり前です。

また、スタディサプリは高校が利用を必修化するなど、個人で利用するだけでなく、学校全体が利用しています。学びエイドは、塾を通して使わせる例が多いのですが、学校が使わせたり、個人で加入していたりします。学びエイドは、無料でも利用できます。無料の場合、一日3コマまでの利用ですが、有料のプレミア会員でも、年間利用料金は9,800円です。

いまや、ネット系の映像配信は、通信教育のみならず、いろいろな形で無料から低価格の有料会員まで、幅広く浸透しています。それが、コロナ危機と学校休校で加速されました。塾としては、生徒にどのような映像授業を活用しているか聞いてからでないと、指導ができない時代に突入しています。知らずに指導していると、退会の危険が増すと言う状況まで広がっているのです。

3月から5月の塾サイドの売上減の原因と大きさを考えると、3月から5月に塾から通信教育に乗り換えたと考えるのは間違いです。この時期退塾は、大きく減少しているのです。塾に行くはずの生徒が、外出自粛要請で、塾ではなく通信教育を選択した人は少なからずいたと思われます。しかし、それだけなら受講料が塾より安い通信教育を選択したら、家庭の教育費の支出は下がるはずです。家庭の教育費の支出が上がったということは、塾を辞めずに、通信教育を併用した家庭が多かったと考える方が妥当でしょう。

そう考えると、8月、9月に問合せが増えている塾と一向に増えない塾の差が何であるか見当がつきます。学校休校中に行われた塾のオンライン授業やオンラインスクール、オンライン自習室、オンラインホームルーム、オンライン学習進捗管理などのサービスが通信教育よりも勝っていた塾が、保護者紹介により問合せを増やし、オンラインでの指導が通信教育より劣っていた塾が問合せを増やせないでいるのではないでしょうか。

9月20日現在、全国的に見ても、通信教育から塾に生徒が戻っている兆候は見られません。永遠に戻らないかもしれません。いや、ますます、通信教育に流れていくと考える方が自然だと思います。

塾サイドとしては、通信教育に対抗し、生徒の学習進捗管理や生徒への個別対応を強化するか、通信教育を併用して指導レベルを上げていくかの選択が迫られています。

【5】生徒・保護者のITリテラシーの向上

学校休校期間中、全国の学習塾でオンライン授業が広く取り入れられたことで、生徒や保護者のITリテラシーは急速に向上しました。ITリテラシーの三要素である、パソコンリテラシー、情報基礎リテラシー、ネットワークリテラシーの中で、特にネットワークリテラシーの向上は驚くべきものがあります。コロナ危機の前に、ズームで面談をやろうとしても、対応できない保護者がほとんどだったのですが、今や、平気でズーム面談ができます。講習会の案内等を動画で作成して見てもらうことにも抵抗が無くなっています。

ある塾で、有料の定期テスト対策の案内を動画で作成し、ズーム面談で申し込みを取ったところ、全社員が80%から83%の申込率の中にいました。つまり、一人ひとりの面談力ではなく、動画の説得力によって申込率が決まったのです。これは、大手塾等で、新米社員の講習会参加率や入塾率を上げられる可能性を持っているということです。パンフレットの作成なども、これから動画に置き換わっていくのではないでしょうか。講習会も、ズーム面談で申し込みを取る時代になって行くと思います。わざわざ塾まで来てもらう必要が無くなれば、保護者の負担も軽くなります。

【6】GIGAスクール構想の前倒し

学校休校やコロナ危機での持続化給付金の申請などで、日本のIT技術の遅れが顕著になりました。それを受け、2023年度末までに、公立の小中高生に、一人一台のタブレット端末の支給を決めていたGIGAスクール構想を、2年前倒しで行うことが決まりました。つまり、今から半年後の2021年3月末までに全国の小中高校でタブレット端末の配布を完了するということです。iPadかWindows又は ChromeのOSを搭載したノートパソコンから選ぶことになっていますが、iPadが人気のようです。しかし、急な話で、供給が追い付かず、2021年3月までに配布できないところも出そうです。

それよりも問題なのは、元々学校の先生をサポートするICT支援員の配置が計画されていましたが、その配置が遅れてしまっていることです。また、2023年までにやる予定だった研修が消化ができないことです。ハードを急いで配布しても、ソフトの指導ノウハウの構築が送れ、学校現場での混乱が予想されます。GIGAスクール構想の目的を実現するにはまだまだ時間がかかるでしょう。

教材のデジタル化や宿題のデジタル化、学習進捗管理への活用などと共に、アクティブラーニングへの活用も目的になっています。今使われている映像授業の配信や問題演習、学習進捗管理等に使われるタブレットの使い方とは全く違った使い方になります。

下記のタブレット等の活用画像を見ていただくだけで、いままでのタブレット等の使い方とは明確に異なることが分かると思います。

 

※詳しくは、「GIGAスクール構想の実現に向けたICT活用指導の向上及び指導体制の充実 文部科学省」を検索してください。上記画像は、その中の一部です。

学校の授業がデジタル化され、オンラインでの通信教育が拡大を続ける中で、学習塾はタブレット端末の活用インフラと活用ノウハウを早急に構築しないと、生徒・保護者の急速な塾離れが起きてしまう危険性があります。逆に言うと、GIGAスクール構想に沿った改革を早く進めた塾が生き残ることになると思います。

コロナ危機の課題に追い立てられ、GIGAスクール構想に対する備えをする余裕のない塾が多いと思いますが、この1年半は塾が生き残れるかどうかの分かれ道になります。息を止めてでも、全力疾走をしなければならない1年半になります。

1年半と言うのは、2021年31月までに学校に端末が入り、4月からGIGAスクール構想に基づく授業を始めても混乱が続くでしょうが、やがて将来の学校のイメージが見えてきます。それと並行して、学習塾も新たな学校現場の状況に沿った指導をしなければならなくなると思います。早過ぎたら、学校の変化が正確には予測できず、手探りばかりが続くでしょう。遅れたら、他塾に先を越されるでしょう。

※文章の中の情報は、ネットで検索したものか、顧問先や顧問先と他塾の情報交換によって入手した情報を基にしています。塾の固有名詞を出すことができませんが、実際の塾現場のデータに基づいています。

【連載:コロナ危機の中の学習塾】
Vol.1 困惑する学習塾。緊急事態宣言下から学ぶものはなにか?
Vol.2 塾の授業がオンライン化するだけでは代替できなかったもの 
Vol.3 各塾の売上確保策と伸長策
Vol.4 迷ったときは消費者の声に耳を傾ける
Vol.5 生徒・保護者のITリテラシーの向上
Vol.6 WITHコロナの中の学習塾

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それ、見られてるかも!? 塾人が注意すべき6つの行動

それ、見られてるかも!? 塾人が注意すべき6つの行動

著者の紹介

安多 秀司 (やすた・ひでし)

株式会社リアル・パートナーズ、株式会社個別教育フォレスト

ゴールフリー、スタンダードカンパニーを経て独立。個別教育フォレストを開校。個別指導歴17年。自塾を運営する傍ら、全国各地で個別指導塾の経営コンサルティングやセミナー登壇などにも精力的に取り組んでいる。

 

学習塾は、地域ビジネスです。その地域、その町に根差して、そこに暮らす人たちを対象に商売をさせてもらっているのが基本の形ですよね。言ってみれば「町の八百屋さん」「町の魚屋さん」と変わりません。生徒さん、保護者さん、さらに卒業生やその保護者さんまで、私たちの顔と名前を知っている人が、周囲にたくさん住んでいらっしゃるということです。

ちょっと教室の近所を歩いているだけでも、(私たちは気付いていなくても)道の向こうで保護者さんが「あっ、○○先生だわ」と気付いておられることもよくあるでしょう。例えとしては不適切かもしれませんが、もしそのとき、思いっきり鼻をほじっていたらどうでしょう。まあ人間ですから、鼻をほじりたくなるときくらいあるでしょうが(笑)、公の場で見せて良い姿でもありませんよね。それならまだしも、ちょっとした気の緩みから、塾の信用に関わるような姿を見せていたら……

「いつ、どこで、誰が見ているか分からない」――学習塾で働く人間は、プライベートも含めてそのあたりを常に意識しておく必要があります。

塾の先生は「見られている」!

今回は、特に教室外での注意したい、6つの行動についてお伝えしてみたいと思います。あなただけではなく、社員さんや講師の方も含めて、全社的に意識するようにしてみてください。

<注意すべき6つの行動>

  1. 交通ルールを守る
  2. 大声で電話しない
  3. タバコは控える
  4. 休日も身だしなみには気を付けて
  5. 居酒屋で仕事の話はNG
  6. お店の人には親切に

塾人が注意すべき6つの行動

【1】交通ルールを守る

例えば、赤信号だけど車が来ていないので道路を横断するとか。急いでいて、少し車を飛ばしてしまうとか。いずれも「つい」やってしまうレベルの交通違反です。でも、そんな姿を生徒さんや保護者さんが見ていたらどうでしょう。

彼らからしてみると「宿題をやってきなさい」「ルールは守りなさい」なんて、どの口が言うのかって話になってしまいますよね。そういうダブルスタンダードで言動不一致な姿勢は、特に子どもたちには強い反感を与えます。「信用できない大人」のリスト入りです。

そんな「信用できない大人」から、道徳的なことを諭されたり、厳しい指導をされたりしても、子どもたちの心には響きません。面談で保護者さんにもっともらしいことを言っても、信用してもらえないかもしれません。

人に「指導」をする立場にある人間が、そういうことではいけないですよね。逆に、こういうことがちゃんとできる姿を見られていると、「ああ、きちんとした先生なんだな」と分かっていただけます。なにも聖人である必要はないと思いますが、まがりなりにも、自分は「先生」と呼ばれる立場であることをいま一度思い出し、守るべき―ルールは守る姿を示しましょう!

【2】大声で電話しない

教室は「オフィシャルな自分」であると意識して、丁寧な言葉遣いや態度を意識している先生は多いでしょう。でも、そんな先生が外に出た瞬間、携帯電話で大声で話していたり、下品な言葉遣いで話していたりする姿を見られたらどうでしょう。

友人や家族と話すときは「プライベートな自分」になるのは仕方ありません。でも、少なくともその姿は、教室の近くでは見せないほうがいいということですね。それを見かけた生徒さんや保護者さんは、あなたが誰と何の話をしているのかまで分からないのですから。

電話に限った話ではありませんが、こんな経験はないですか?何かのお店で、お客である自分に丁寧な言葉遣いで接してくれていたのに、その用件が終わるや否や、まだこちらが声の聴こえる範囲にいるにも関わらず、隣のスタッフと「そんでさ、おまえさあ~」なんてバカ話を始めるとか。あんまりいい気はしませんよね。

特に通話中は、つい会話に意識が行って、周囲への注意力が散漫になります。生徒さんや保護者さんが近くにいるのに付かないこともあるかもしれません。「素」の自分を出して大声でしゃべるのは、自宅に帰ってからにしましょう!

【3】タバコは控える

吸うなとまでは言えませんが、やはり教室の近くではやめたほうがいいですね。近所の喫茶店などでも、できれば避けたほうが無難です。もちろん、歩きたばこやポイ捨ては言語道断です。

最近は喫煙マナーを意識する風潮が社会全体に広がっていますから、さすがにもうしてないとは思いますが、以前にこんな光景を目にしたことがあります。塾ではなく、ある私立中高の近くを通りかかったときのことです。

校内での喫煙が禁止されているのか、数名の先生方が校外に出てきて、そのへんでプカプカやってるんですよ。喫煙行為そのものは嗜好の問題ですから責められせんが、さすがにそこで吸ってはダメでしょうよと。しかも、首から下げたネームプレートを隠すこともなく……。「私はこの学校の教員ですよ」ということを周囲に告知しながら、道端で喫煙しているわけですからね。こちらは塾の人間なので、「ああ、あの学校の先生はこの意識レベルか」と思ってしまいますし、自信を持って生徒に受験を勧めることもできなくなってしまいます。

これを保護者さんと塾に置き換えても、同じことが言えますよね。気をつけたいところです。

【4】休日も身だしなみには気を付けて

休日の身だしなみにも、多少は気を配ってください。出勤するときと同じようにパリッと決める必要はありませんが、さすがにボサボサの髪、よれよれのジャージ、毛玉だらけのスエット、醤油のしみがついたままのTシャツ、不精ヒゲなどで近所のコンビニやスーパーにいくのは避けましょう。

これも以前にある塾の先生に聞いた話ですが、そういうだらしない格好でコンビニに行ったら卒業生がバイトをしていて、思いっきり笑われたことがあったそうです。

まあ笑われるくらいで済めばいいかもしれませんが、内心では嫌悪感を抱いている可能性も否定できません。年頃の女の子は特に「不潔感」に対しては敏感です。そんな悪い印象やうわさが、卒業生から地域に広まることだってあります。クチコミって、良くも悪くもそういうものですしね。

外出するときは、最低限の身だしなみは整えておきましょう。

【5】居酒屋で仕事の話はNG

これはかなり危険です。でも、この手の「やらかし」は本当によく聞きますよ!

私も経験があります。知人と近所の居酒屋で飲んでいたとき、後ろの席にいた4人組のグループが大声でしゃべっていました。酔っぱらって気分が良くなっているのか声も大きくなり、自然とその会話がこちらにも聞こえてきます。話の内容から察するに、どうも大手個別指導塾の社員さんのようです。

しかもその話の内容というのが、生徒さんや保護者さんの悪口や、仕事の愚痴の大売り出し!聞いているこっちが「おいおい、そのくらいにしといたほうがいいのでは……」と感じてしまうほどでした。

いや、分かりますよ?仕事は楽しいことばかりではありません。酒を飲んで憂さを晴らしたいことも、つい愚痴や悪口を言いたくなる時もあるでしょう。でも、さすがにここでやっちゃダメ!!生徒の保護者さんだって、夜は飲みに行くことだってあります。先ほどのコンビニと同様、卒業生がバイトをしている場合もあります。これは本当にNGです。

お酒は正常な判断力を失わせます。そういう意味では、愚痴や悪口だけでなく、業務に関することを話すのもできれば避けたほうが無難だと思います。守秘義務的な内容を、つい大きな声でしゃべってしまっては、誰の耳に入るか分かりません。やはりお酒は楽しく、他愛もない明るい話題でいきましょう!

【6】お店の人には親切に

私たちがお客の立場であるときを創造してください。例えば、お店の応対が悪かったり、店員さんの接客が失礼だったりして、ムカッとくることってありませんか?「プロ意識の低さ」とでも言うのでしょうか、私はこういうお店や店員さんについイライラしてしまうタイプで、個人的には特に気を付けている要素です。

いくら向こうに非があっても、激高して大きな声を出してはいけません。どうしてもクレームを入れたい場合は、落ち着いて静かに淡々と、目立たないようにやるべきです。他の項目にも言えることですが、もしその姿を生徒さんや保護者さんに見られていたらどうでしょう。彼らは、あなたに正当性があるかどうかなど分からないのです。ただ「大声でブチ切れている先生」としてしか映りません。

また、「お客様は神様だ」とばかりに店員さんに横柄な態度を取るのもダメですよ。その店員さんは、自塾生徒さんの関係者かもしれないのですから。それに私たちだって、モンスターカスタマーのような保護者さんに初めから高圧的な態度でこられたら、いい気はしませんよね。普通に、人として良くない態度だと思います。

こちらが誰かバレなければいいと思われるかもしれませんが、例えばコンビニで電気代や水道代を払っているとすれば、あなたが何者かはすぐ分かります。気を付けてください。

「見られているから」しないのではなく

いかがでしょうか?これはすなわち、危機管理なんです。当たり前の6項目ですが、意外にドキッとされたこともあったのではないでしょうか。

しかし、「見られたら困るからやってはダメ」なのではありません。それでは、小さな子どもが「怒られるからいい子にする」と言っているのと同じレベルですよね。そもそも「塾の先生」として、「人」として襟を正すべきものばかりです。

お互い、意識を高く持っていきましょう!

 

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【コロナ危機の中の学習塾】vol.5 生徒・保護者のITリテラシーの向上

~コロナ危機の中の学習塾~
vol.5 生徒・保護者のITリテラシーの向上

著者の紹介

多田 昭寛 (ただ・あきひろ)

個別指導研究会代表

塾業界に、「個別指導」という業態を全国 に広めた第一人者。大手進学塾専務、 大手個別指導塾代表取締役を歴任。現 在も、全国各地の学習塾の顧問を務める など精力的に活動。その教育論や実践 例を伝えるセミナーが好評を博している。

 危機をチャンスと捉えて経営の進化を

 3ヶ月の学校休校期間中に、学習塾においては大きな変化が起きました。ズームを使えなかった社員がほとんどだったのに、全員が使えるようになり、オンライン会議が当たり前になっています。しかし、実は塾側の変化よりも、生徒・保護者側の変化の方が大きいのです。生徒にタブレットやパソコンを渡して、デジタル教材や映像教材を活用したくても、今までは生徒が使いこなせないと言う理由で普及できなかったのですが、この三ヶ月でハードもITリテラシーの準備も整い、いつでもデジタル教材や映像教材を塾の授業にとりれることができるようになっています。また、ズームの録画機能を活用することで動画作成も簡単になり、資料請求の問合せに対し、パンフレットの代わりに動画を配信することができるようになっています。定期面談も入会面談さえも、オンラインで可能になりました。

 ある塾で、6月から長期間の定期テスト対策を実施することになり、動画を作成し、その動画を見ていただいた後、ズームで面談し、申し込みを取ることになりました、数日で動画を作成し、1週間でズーム面談を終わりました。4万円以上の受講料だったのですが、8割の受講が有りました。驚いたことに社員間の格差がほとんどなく、80%~83%の幅に入っていました。面談で受講が決まったと言うより、動画の説得力で決まったと言えます。これは、教室展開をする大手塾にとっては、講習会の提案や入会面談などに活用できる手法だと思います。学校休校以前なら、動画を見てくださいとか、ズームで面談しますとか言えるはずもなかったのですが、3ヶ月で何の抵抗も無くなっています。

 学校休校中に、オンライン授業をやらず、教室での授業を続けてきた塾は、この生徒・保護者のITリテラシーの向上が起きていないと思いますし、社員もITを活用した塾運営を考え付けないと思います。今からでも遅くはないので、ITを活用した授業や面談等に取り組まないと、社会の変化について行けなくなると思います。

 とりあえず、comiruでも入れてみますか。保護者とのcomiruを使ったコミュニケ―ションでスキルを磨いてはどうでしょう。

 今回は、学校休校と学習塾の対応を見てきましたが、コロナ危機が学習塾の運営に大きな変化をもたらしています。コロナ危機で世界は大きく変わりました。学習塾も大きく変わりました。もう元には戻れません。元に戻れば、確実に学習塾は崩壊します。今後の経営スタイルについて次回の連載で再びエントリーしたいと思います。

【連載:コロナ危機の中の学習塾】
Vol.1 困惑する学習塾。緊急事態宣言下から学ぶものはなにか?
Vol.2 塾の授業がオンライン化するだけでは代替できなかったもの 
Vol.3 各塾の売上確保策と伸長策
Vol.4 迷ったときは消費者の声に耳を傾ける
Vol.5 生徒・保護者のITリテラシーの向上

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【コロナ危機の中の学習塾】vol.4 迷ったときは消費者の声に耳を傾ける

~コロナ危機の中の学習塾~
vol.4 迷ったときは消費者の声に耳を傾ける

著者の紹介

多田 昭寛 (ただ・あきひろ)

個別指導研究会代表

塾業界に、「個別指導」という業態を全国 に広めた第一人者。大手進学塾専務、 大手個別指導塾代表取締役を歴任。現 在も、全国各地の学習塾の顧問を務める など精力的に活動。その教育論や実践 例を伝えるセミナーが好評を博している。

 Comiruの活用

ここまで、全体的に危機的な売上減が広がっていると言う話をしてきました。オンライン授業の実施が早くても大きな痛手をこうむっています。

教室で授業を続けるか、休講にして振替を行うか、オンライン授業をやるか塾の社長や幹部の悩みは尽きませんし、決断したとしても果たして正しい決断なのかは分かりません。しかし、結果を見るとどの判断でもそれなりの痛手をこうむっています。

しかし、その中で何も悩むことなく決断し、生徒数・売上共に増やしている塾がありました。

塾の社長や幹部が、塾の施策を考える時に、生徒や保護者の意見も聞かずに考えると言う思考パターンはいつから始まったのでしょうか。大手塾になればなるほど、社長や幹部は現場から遠くなり、生徒や保護者の声に耳を貸さなくなったようです。

実は、学校休校でも外出自粛要請でも何も悩む必要はなかったのです。私たち学習塾は、生徒・保護者のために教室運営をやっており、授業を続けるか、振替をするか、オンライン授業をやるか、オンラインスクールをやるかは、保護者に聞けばよかったのです。私は、学習塾の顧問をやっているのですが、その中にcomiruを導入している塾が有りました。3月2日学校休校が始まる前に、教室での授業を希望するか振替を希望するかcomiruを通して保護者全員にアンケートを取りました。次の週には、オンライン授業の準備をし、教室での授業か振替かオンライン授業かの希望を聞きました。4月の第1週には、オンラインスクールを準備して参加を募りました。

その結果は、3月は8割以上が教室での授業を希望し、オンライン授業が始まると振替の希望はほぼ無くなりました。4月は8割弱が、5月は7割くらいが教室での授業を希望していました。他の塾でもアンケートを取りながら選択制を取った塾がありましたが、都市部は上記のような結果になり、地方ではこれより1割程度教室での授業を希望する人が多くなっています。外出自粛要請が出ている中であっても、塾側が思った以上に、教室での授業の希望が多かったのです。

オンラインスクールの実施については、参加の意思だけでなく、たくさんの感謝の声が寄せられました。この塾では、オンラインスクールは生徒の友達にも開放されましたので、塾生以外の参加も塾生と同数ぐらいが参加しました。口コミだけで広がったのです。外部からのオンラインスクール受講者にもcomiruで連絡が取れるようにしました。今でも、この時のオンラインスクールに参加した外部生からの入会は続いています。オンラインスクールに参加し、教室に通えない遠方の人がオンライン授業を受講しています。6月から有料の定期テスト対策も実施し、夏期講習の売上も前年同様に確保できたので、今ところ売上は前年対比120%以上、生徒数は前年より若干多い程度で推移しています。これも勝手に塾運営を考えずにcomiruを使って生徒・保護者と共に塾運営を考えてきた結果だと思います。

一方で大手塾でcomiruを導入している塾が、3月の授業を振替にして大きく売上を下げてしまいました。同じようにcomiruを導入していたのになぜこんな違いが起きたのか?大手塾では、生徒・保護者との距離が遠い幹部が方針を決定してしまいがちだからです。しかし、comiruが有れば、いつでも気軽にたくさんの生徒・保護者の気持ちを知ることができます。現場から遠いからこそ、生徒・保護者の声に耳を傾けるべきではないでしょうか。

 

【連載:コロナ危機の中の学習塾】
Vol.1 困惑する学習塾。緊急事態宣言下から学ぶものはなにか?
Vol.2 塾の授業がオンライン化するだけでは代替できなかったもの 
Vol.3 各塾の売上確保策と伸長策
Vol.4 迷ったときは消費者の声に耳を傾ける
Vol.5 生徒・保護者のITリテラシーの向上